この嫦峨山とは少し仰々しい名前だが、どのような山なのか、山上からはどのような景色が広がっているのだろうかと逆に興味が湧いてきた。その嫦峨山を1994年4月、春爛漫と言える春霞がうっすらかかる日に訪れた。登山コースの見当が付かなかったので、まずは屋津坂より歩き始めた。少し歩くと南面側となる室津港側に回り込む小径が見えたので、そちらに入った。小径は南麓の畑地に向かうだけだったようで、すぐに終わってしまった。そこは山頂より室津へと延びる尾根の端近くであったため、そこで適当に尾根を登って行くことにした。尾根に小径は見えず、ヤブコギで登って行った。始めは竹林が続き、その後は雑木林が辺りに広がっていた。イバラもありササヤブもあった。ひたすら雑木をかき分けかき分け登って行くしかなかった。常緑樹が占める雑木林は鬱蒼としており、周囲をすっかり閉ざしていた。それでも途中で何度か露岩地が現れて、少しは展望が得られた。山頂が近くなったのか尾根が平坦になってきたとき、漸く小径に出会った。目印も付いていた。どうやら登山コースは有ったようだった。後はその小径を辿って山頂に到着となった。しかしそこはすっかり雑木に囲まれて、期待した展望は全く無し。どうも嫦峨山と言う名に惹かれて登って来たのだが、印象を受けるほどの山頂では無かった。単に「室津山」とでも付いておれば、過大な期待をせずに登ったろうにと、少々残念な思いであった。下山は目印の付いていた小径を忠実に辿ることにした。雑木の中を細々と小径は続いていたが、室津側には向かわず、屋津坂へと西に延びる尾根に向かい出し、最後は屋津坂道に合流した。
(2002/11記)(2011/4改訂)(2022/3写真改訂) |