二度目の薬師峰を目指したのは、2002年の正月休暇中の3日の日のこと。この日の兵庫北部は寒波襲来で大荒れの天気だった。その影響か夢前町へは県道23号線(三木山崎線)を走って向かっていたのだが、路上に雪が見られスリップする車も見かけた。七種山方向に向かう県道に入ると、路肩の雪は5cmほどになっていた。この日計画したコースは福崎町板坂から山頂を目指すもので、板坂集落に入って一之宮神社の鳥居のそばに駐車とした。駐車地点付近も地表はうっすらとながら雪に覆われていた。神社の石段を登って本殿の前へ。山頂から南東に延びる尾根を一番端から歩こうとの考えだった。その背後から尾根道が始まっておればとの思惑だったが、それらしき道が見えないため本殿背後の山肌に適当に取り付いた。雪に滑らないよう注意しながら灌木帯のやや急坂を木に掴まりながら登って行った。10分ほどで尾根に出たが、尾根道らしいものは見えず、ただ灌木が繁っているのみ。それをかき分けて少し北に向かうと、あっさりと206mピーク(点名・板坂)に着いた。ここもすっかり雑木に囲まれていた。木立の間から周囲の尾根が見える程度だったが、それでも南の方向に大倉山を見ることが出来た。そこからは長い尾根歩きが始まるが、雪のことを考えて雨具、スパッツを身に付けた。始めのうちは尾根道もはっきりせず灌木をかき分けながら進まなければならなかったが、次第に尾根道がはっきりし出して苦労なく歩けるようになった。気が付くと途中から真新しい足跡も付いていた。このような尾根では珍しいと感心していると、その先で西側が開けている場所に出た。足下に貯水池が見えており、向かいに見える尾根のピークは397mピーク(点名・三谷奥)のようだった。その先には夢前町南部の山々が広がっていた。ここでばったりと人に出会った。先ほどの足跡の主だったが、登山者で無くハンターであった。どうやら何人かが猟に入っているようだった。そこからは400mピークへの登りとなるが、尾根道が右手に迂回しだしたので、道なりに歩いて行くことにした。そのままピークを迂回すると思っていたところ、急斜面の途中で消えてしまった。辺りは雪を被ったシダヤブだった。とにかくそこを抜け出そうとその急斜面を登ろうとしたが、あまりに急斜面過ぎて登れそうもなかった。ただ戻るのもいやなので、少し位置を変えたりしながら傾斜の緩い所を捜して進むうちに、何とか登りきることが出来た。おかげですっかり雪まみれになってしまった。その位置でまだ行程の三分の一ほどだった。その先は538mピーク(そうびろ山)へと向かうのだが、どうも道がはっきりしていなかった。そこで灌木をかき分けながら鞍部まで適当に下ると、漸くはっきりとした尾根道が現れた。その道を辿って538mピークへと尾根を登っていると、一カ所けっこう厳しい所が現れた。岩場なのだが雪ですっかり滑り易くなっていた。滑れば大けがとなるので、とにかく慎重に登る。登り切ると、岩場だけに眺望は素晴らしかった。西に明神山が見えており、それがうっすら雪化粧をしてなかなかの美しさだった。その岩場の上がピークかと思っていたが、更にもう一登りした所が538mピークのそうびろ山だった。そこは雑木に囲まれており、展望は無し。休まず先を急ぐことにした。時々木立を通して、肩を張ったような薬師峰が見えていた。やがて南からの尾根と合流することになった。その位置で漸く行程の三分の二ほどか。もうはっきりとした尾根道があり、気楽な尾根歩きとなった。行く手に薬師峰の頂が見えていたが、雑木に切れ目が無いのですっきりと全姿が見られるとはいかなかった。この尾根歩きの間に天気は下り坂を見せてきて、ほとんど陽射しは消えてしまった。そして黒い雲が北から流れて来た。気温も下がって来たようだった。ほとんど展望の無いまま、最後は急坂を登って山頂に着いた。小さな祠のある山頂はこれで二度目。北東側のみ開けて間近に七種山が見える風景は、前回と変わり無し。ただ遠方は雪でも降っているのかぼんやり霞んでいた。それも徐々に悪くなり、始め見えていた笠形山は次第に見えなくなって来た。近くの山もうっすらとして来た。それにしても陽射しが消えている上に冷たい風が吹きつけているとあってとにかく寒かった。震えながらも何とか昼食をとったが、じっとしていると濡れた靴が足を冷やしてくるので、やりきれない冷たさだった。雪のある日は冬靴を履くべきだったと反省させられた。食事を済ませると、早々と下山に向かった。帰路は南の尾根を下っていくことにする。この尾根は所々で展望があり、先ほどまでいた薬師峰や明神山、雪彦の山並みを眺めることが出来た。特に素晴らしかったのが397mピーク(点名・三谷奥)の手前にあった岩場のような痩せ尾根で、そこから見る明神山は長々と尾根を延ばして、標高に見合わぬ雄大な姿を見せてくれた。ただ朝に見た雪化粧は消えていた。397mピークからは東へと延びる尾根を辿った。途中に送電塔があるので巡視路でも付いているものと思っていたが、送電塔が近づくほどにヤブがきつくなって来た。ササや灌木が茂っており、けっこう苦労させられた。送電塔を越して漸く歩き易くなった。麓の貯水池に下り着くと、後はそこから始まる村落を抜ける道を辿って駐車地点へと戻って行った。
(2002/1記)(2013/2改訂)(2021/3改訂2) |