須留ヶ峰の山並みを西から見ると、その大きな須留ヶ峰にひけをとらない存在感のある山が北向かいにあって目に付く。それが御祓山で、小ぶりながらなかなか端正な姿をしている。この気になる山を目指したのは95年のことで、新緑がひときわ美しい5月の季節だった。ただ登るに当たっては、登山コースの有り無しも分からなかった。そこで「大屋市場」の地図を開くと、南のカカナベ峠まで破線路の記されているのが見えた。そこでカカナベ峠から尾根づたいで山頂を目指すのが一番手頃に思えた。
大屋町に入って宮本集落より須留ヶ峰方向へと宮本川に沿って延びる林道を進んだ。そして途中の駐車しやすい場所に駐車して歩き始めた。林道が終わっても、道は沢沿いに作業道となって続いていた。ところが道なりに歩いていると、道は沢沿いに北に向かい、カカナベ峠の方向から逸れだした。それも仕方ないと、そのまま歩くことにした。道は次第に細り、やがて不確かになったが、かまわず沢沿いを登り詰めて行った。途中、沢を登ったり傾斜のきつい斜面もあったが、登り詰めると、山頂から南に真っ直ぐ延びる尾根に合流した。そこからの尾根歩きが楽しかった。きつい坂もあったが、尾根を取り巻く雑木が新緑をむかえており、その若葉がまぶしく、まさに緑の回廊を歩いているといった素晴らしい印象だった。この緑を愛でながら悠々とした気分で山頂に着いた。そしてこの山頂に来て、初めて展望を得た。山頂には共同アンテナが立っており、そのため南面の雑木が伐採されていたのだった。期待していた大杉山から須留ヶ峰の山並みが、眼前に大きく姿を見せていた。また東には建屋山も近かった。この眺望を更に楽しもうと、共同アンテナの支柱に登ると、更に素晴らしい展望となった。腕のしびれを我慢しながら、暫しこの眺望に見とれていた。下山は、南へ延びる尾根をひたすら下ることにした。とにかく尾根を外さないように慎重に下り、予定通り宮本川に下り着いた。そして、最後は川を渡渉して林道に上がった。
(2001/12記)(2012/8改訂)(2020/4改訂2) |