姫路市内で、ごく短時間の気軽なハイキングを楽しむとなると、書写山は最適と言える。歩き易い登山道を登って、山上に広がる古刹、円教寺の境内巡りが楽しい。その山上への道は東坂、西坂、六角坂、刀出坂、鯰尾坂、置塩坂と色々あるが、暑い季節は木陰の多い刀出坂が良さそうに思える。10年9月第二週の週末は土日ともに忙しく、日曜日の午前10時までなら空いていた。そこで少しは体を動かそうと、その10時まででミニハイキングを楽しむことにした。当然、刀出坂コースである。駐車したのは刀出集落にある刀出天神の駐車場。外に出ると、まだ7時前の早朝と言える時間なのに、なま暖かい空気に包まれた。気温は23℃と高くは無かったが、湿気を十分に含んだ空気だった。その神社のそばには案内標識が立っていたので、その標識のままに前の車道を東へと歩いて行く。山頂まで1.8kmほどだった。すぐに車止めが現れて、その先へ車は進めなくなっていた。車道は緩い坂のまま続いており、右手が広い範囲で草ぼうぼうの荒れ地になっていた。たしか以前は古びた市営住宅があったはずなので、それが取り壊されて、その後は荒れ放題になっているようだった。その住宅跡地の縁を回るように、途中から南へと向かうと、西からの別の道と合流した。合流したすぐ先が登山口だった。後は登山道をただ辿って行くだけだった。7時を回ったばかりとあって、まだ朝日は届いておらず、薄暗い中での登りだった。坂を登り出したことと風も無いことから、たちまち大汗となったが、坂の傾斜は緩いと言えるものだったので、登ることについては楽な登りだった。道は長年の風雨でえぐれた所も見られたが、おおむね歩き易く、いにしえから歩かれてきたことを窺わせる落ち着きが感じられた。ただ中腹を過ぎてもずっと薄暗く、もう山上が近いのではと思えだした頃になって、漸く周囲の木立に光が当たり出した。まず着いたのは護法堂拝殿のそば。護法堂拝殿は修復工事中のようで、工事用のシートで覆われていた。そこより小径を右手へと歩くが、もう辺りは境内の雰囲気となった。金剛堂のそばを通って、鐘楼に出る。そして大講堂の広場へ近づいて行くと、辺りの様子が平常と違っていた。あちらこちらに機材が積まれており、テントも置かれていた。人影はほとんど無かったが、この日に何かイベントが山上であるようだった。大講堂の前に出ると、常行堂は舞台になるのか、照明の準備もされていた。どうもここでライブコンサートでも行われるのかも知れなかったが、朝早い時間とあって、ここも機材だけで、人影はちらほらだった。その大講堂のベンチで休憩とする。山上に出てからは、弱いながらも風を受けるようになっており、朝の爽やかさが感じられた。その風を受けながら、そして境内の平常と違う佇まいを眺めながら朝食とした。その食後、せっかく山頂に近い位置に来ていたので、山頂を踏むことにした。但しパートナーはこのままベンチで憩っていたいと言うので、こちら一人で山頂に向かった。北へと急坂が車一台分の幅で続いており、その車道を登ると、給水設備の前に出た。そこより南へと小径を歩くと、僅かに高い位置があり、そこが山頂だった。一段低い位置に白山権現が建っていた。後は白山権現のそばまで来ていた小径を下って行くと、大講堂のそばに戻り着いた。もう辺りは、さっきとは様変わりしており、大勢の人が動き回っていた。摩尼殿まで今少し山上散策をしてもよいかと考えていたが、辺りのざわつきを見て下山することにした。下山は刀出坂を引き返す。漸く朝の光が、林の中に届くようになっていた。下山は45分ほど。休み時間を入れても2時間のミニハイキングだったが、十分に汗をかいたおかげで、すっかり体はほぐれており、すっきりとした気分で帰路についた。
後日、この日に山上で何が行われたか調べて見ると、野外イベントの「にじのわまつり」が開催されて、約三千人の人出で賑わったとのことだった。
(2010/9記)(2021/4改訂) |