大蔵山はたつの市街の北に広がる山並みの主峰である。そしてたつの市の最高峰でもある。この大蔵山には山頂近くに貯水池として大成池があり、また菖蒲谷森林公園もあって、ふもとより立派な舗装路が続いている。いわゆる山岳道路になっているため、これが暴走族?の格好の練習場になっているのか、走っていると、多くの改造車両を見かけた。また道路には無数のタイヤ痕が付いていた。どうも必要以上に立派な道を山中に作ると、こうなってしまうという見本のような風景に思えた。また大成池もウルグアイラウンドによる補助金とかで、必要以上に立派な護岸がされており、それを巡る道もカラー舗装されていて、町中の公園かと見間違うほどだった。これもあまり良い光景とは思えなかった。ところで大蔵山の登山を考えると、大成池まで車を進められるため、そこから大蔵山山頂までは20分ほどの距離でしかない。あまりにも簡単に登れるため長らく訪れる気になれなかったが、2002年の6月下旬に8年ぶりに再訪とした。
大成池の南西端から少し山中に入るとキャンプ場があるが、そのそばの尾根に付いている大蔵山への遊歩道を登り出した。適度な道幅の山道で、きつい所も無くごく気楽に登って行けた。ただ周囲は樹林が囲んでおり、展望は無かった。十数分で山頂の北隣りとなる510mピークに着いた。ここに立つのは2度目となるが、ここには展望台が建っている。その展望台にさっそく上がった。見えるのは南の方向で、御津町や相生市の山並みが見え、沖には小豆島も見えていた。この風景は前日に登った的場山と同じだったが、こちらの方が周囲の尾根が迫っている関係で、広々とは言えなかった。ただこの日は曇り空にも関わらず視界の透明度が高く、四国が割とはっきり見えていた。この展望をいっとき楽しんだ後、山頂に向かった。数分の距離なので、あっさりと山頂に着く。前回は三角点を見つけていなかったのだが、何のことはない、地図をよく見ていなかっただけで、簡単に見つかった。(前回は展望台から下って登り直した後の平坦地を、うろうろしていたことになる。三角点はそこから南の方向100mほど行くだけだった。)三角点の周囲はすっかり雑木が囲んでおり、薄暗い上に展望は全くと言ってよいほど無かった。それでは残念なので、三角点そばにある大岩を利用して、何とか桜の木に登ってみた。先ほどの展望台で見えた風景が、より狭まって見えただけだった。この山頂に立っただけでは何とも物足りないし、運動には全くならない。そこで地図を見直して、東側にある谷筋の林道まで下りることにした。林道に出た後は林道を北に歩いて新池に至り、そして大成池に戻って来ようとの考えだった。大蔵山山頂から東の方向に向かえば、どう歩こうとも林道に下りられるので、南東に延びる尾根なりに下って行くことにした。緩やかな尾根で、灌木も適度に空いており、けっこう気楽に下って行けた。笹と植林の混じった所もあったが、概ね低木帯が広がっていた。山頂より高度差で100mほど下ると再び平坦な所に出たが、そこより東に向かうと、岩肌が広く現れた所があって、そこはなかなかの展望地だった。向かいに大きく亀山が見え、北東遠くには明神山から七種山、笠形山もけっこうはっきり見えていた。明神山の左手、更に遠くには行者山から暁晴山の尾根も覗いていた。この展望が得られたことで、この日の登山に満足する思いになれた。その先は傾斜がきつくなってきたので、歩き易い所を選んで下った。結局、尾根では小径に出会うことは無く、低木帯を適当に歩いて林道に下り着いた。林道は舗装されていなかったが、十分な道幅で中垣内川に沿って続いていた。林道は大成山林道で、北へと歩いて行く。沢を渡る所が現れて、もう車は通れそうも無かった。やがて道は沢から離れ出したが、沢沿いにも小径が見えた。その小径が新池への近道と考えられるので、そちらを歩いて行くことにした。草がよく茂って道に覆い被さる所もあったが、道自体ははっきりしていた。新池までの中間点を過ぎると、沢の周囲は広く岩肌がむき出した緩やかな地形となり、その辺りで小径は消えてしまったのかはっきりしなくなった。そこで沢筋を適当に登って行くことにした。けっこう順調に登って行けると思っていると、沢が険しくなってきた。そうなると雑木の繁る山中に入って、沢を巻かざるを得ない。雑木の中はシダヤブがあって、そこも避けることになる。灌木の小枝をやや煩わしく感じながら遠巻きをして、再び沢に合流すると、目印が付いていた。その目印のまま登って行くと、沢を離れて尾根の上に出た。後は目印を追わずに新池の方向に下ると、あっさりと新池の湖畔に出た。空梅雨のためか池の水位が下がっており、水際を歩くことが出来たので、南東側にある土手に向かう。そこに人影は無く、ひっそりとしていた。その近くにあった岩の辺りで休憩を始めたとき、ちょうど光が射して来た。湖面や周囲の森が明るく照らされて、新池を美しく見せてくれた。その新池から先は大成池まではっきりとした道が付いていた。大成池の北東端に着くと、後は湖岸路を歩いて駐車地点へと戻って行った。
(2002/9記)(2012/1改訂) |