山名としてユニークな牛ヶ峰山を訪れたのは1997年4月の初めのこと。温泉町の越坂集落を通過する林道を進み、最奥の家を通り過ぎた辺りに駐車した。この日の空は全体的には晴れと言えるのだが、輪郭のぼやけた雲が多く、また視界がけっこうモヤがかっていて、すっきりとはしていなかった。スタートして程なく山道に入った。この山道は参道と言えるもので、山頂手前の神社まで十分な道幅で続いていた。最初は杉の植林帯に囲まれて展望は無かったが、そこを過ぎると尾根を登り始め、辺りは雑木林へと変わった。なかなか落ち着きのある風景で、西の山並みや足下には村落も見えるようになった。ただ尾根に出ると北風が強く、少々肌寒さを覚えた。山頂が近づき出すとブナも目に付くようになった。そして北の展望も現れて、この山と標高がほぼ同じ程度の山並みが望まれるようになった。山頂手前の牛ヶ峰神社に近づくと、辺りは残雪が漸く消えたと思われるぬかるみになっていた。その辺りの山陰にはまだ少し雪が残っていた。ところで神社で珍しいものを見た。神社の水飲み場にガマガエルのものかと思える大きなカエルの卵が、あふれんばかりに産み付けられていた。神社を過ぎると、道をクマザサが覆い出して急にヤブっぽくなったが、すぐに山頂に着いた。越坂集落がすでに中腹辺りなので、標高のわりには、あっけなく山頂に着いたと言えた。山頂はあまり広くは無く、雑木とクマザサで覆われており、そのため視界は悪いと言えた。ただ三角点の近くに登りごろの木が有り、それに登って南方を見ると、どっしりとした山が望まれた。扇ノ山かと思ったが大ズッコのようだった。その左手に霞がかって薄ぼんやり見えるのは青ヶ丸か。山頂はまだ所々に雪を残しており、どの木も芽吹いていなかったが、数本有るタムシバの木のみが白く花を咲かせていた。山頂は見る所では寒々しい雰囲気だったが、そこには風は吹いて来ず、陽溜まりもあって登って来た体にはむしろ暖かささえ感じた。暫し休憩の後、同じ道を辿って駐車地点へと戻った。
(2002/4記)(2014/5改訂)(2020/11写真改訂) |