一宮町と大屋町を結ぶ冨土野峠の東に位置する明延山は、奥深いと言う言葉が相応しい静かな山だった。訪れたのは1995年11月の中旬のこと。この日は雲一つ見られない快晴の空が広がっており、視界も澄み切っていた。一宮町倉床より始まって明延山へと向かう地図の破線路を辿ることにした。破線路は林道となっており、その林道が二手に分かれる位置に車を止めて歩き出した。標高600m辺りまでは林道として延びており、その先も山道となって続いていたが、破線路として示されるほどの明瞭な道でも無かった。稜線が近づくとその道も無くなり、後は山頂まで町界尾根となる稜線を忠実に辿って行った。山頂が近づくとクマザサやイバラが繁り出した。少々手こずらされたが、ただ視界を遮る木々は少ないため展望は良かった。今が紅葉の絶好期で、周囲の山々の紅葉を楽しみながら登って行った。1時間半ほどで着いた山頂は、クマザサが繁って展望はさほど良いとは言えなかった。またササのために三角点を見つけるのに少々苦労させられた。ただそこより少し移動すると好展望地があって、そこからは南に千町ヶ峰から暁晴山、高峰の山並みが、西には東山から一山、阿舎利山と素晴らしい展望が広がっていた。北も雑木に視界を遮られはしたが、木々の隙間から氷ノ山、藤無山、妙見山と、兵庫の雄峰が確認出来た。この日は風に少し冷たさがあるものの、陽射しを受けていると汗ばむほどで、涼しげな木陰を選んで暫しの昼寝を楽しんだ。周囲は紅葉の山肌が広がっており、その中にあって静かなひとときを過ごすことは、かけがえのないものだった。下山は往路を辿って戻った。
(2002/3記)(2008/6改訂)(2023/5写真改訂) |