一宮町の三方町から北を眺めると、この山は水上山と双子のように並んで緩やかな裾野を引いた優しげな姿を見せており、標高は低いものの目に付く山である。この山を目指したのは97年1月半ばの快晴の日だった。一宮町東公文にあるロクロシ・キャンプ場に駐車して、キャンプ場の横を通る林道を山に向かって歩き始めた。キャンプ場周辺は落葉樹が疎らに生えており、風情のある風景だった。林道は暫く歩いたが、途中で山頂から南南東に延びる尾根に取り付いた。この尾根は麓では植林地だったが、登るほどに南面側の展望が良くなって来た。雑木を伐採した後の植林が、まだ低木のためだった。尾根には植林のために伐採された雑木の切り株が多くあり、けっこう歩き難かった。その様子は、ちょうど北隣の水上山に登ったときと似ていた。ただ尾根の傾斜は緩く、ゆったりと登って行けた。尾根に雪は少なく、山頂が近くなっても地表の現れている所も見られた。山頂には1時間半ほどで着いた。山頂は疎らに雑木があって視界は良くなかったが、そこよりわずかに南に移ると、伐採地に出た。その広々とした一帯は、うっすらと雪に覆われており、僅かに植林の幼木が覗いているだけだった。そして素晴らしい展望が待っていた。東に向かってだったが、北から須留ヶ峰、黒原の山々、笠杉山、段ヶ峰、千町ヶ峰、暁晴山と。奥播州の山並みを心行くまで眺めることが出来た。翻ると西側には東山、一山、阿舎利山も木の間越しに見えていた。北を除いてほぼ一宮町の山並みを見渡せたことになる。冬の暖かい陽射しを浴びて、この展望を楽しみながら昼どきを過ごした。下山は南に延びる緩い尾根を下った。こちらは少しヤブっぽく、クマザサや潅木の小枝が煩わしかった。643m地点まで尾根を歩き、そこからは東に向かってやや急な尾根を防鹿ネット沿いに一気に下ると、林道に下り着いた。
(2002/1記)(2015/6改訂)(2021/5写真改訂) |