大屋町はいつも静かな山歩きを楽しめるが、この山もそれを期待して登ることにした。1998年10月下旬の快晴の日で、空気はひんやりとして漸く秋の気配が感じられるようになった。風はほとんど無く、陽射しが快いばかりだった。大屋町中間集落内の狭い道路を抜けて林道に入った。その林道を少し入って、宮ノ下川に西からの急流が合流する地点の近くに車を止めた。そこよりまずは林道歩きから始めた。林道は宮ノ下川に沿ってずっと延びていた。その林道を終点まで歩いて行く。
宮ノ下川は結構水量は多く、また良く澄んでいた。林道が終わっても暫く沢沿いを山道(地図の破線路)が続いていたが、その山道が怪しくなってきたとき沢を離れて西側の雑木の急斜面に取り付いた。手で掴める木が疎らなため、少々手こずりながらも、その疎らな木を伝って登って行った。雑木林にはキノコを多く見たが、どうも食に適したものは少ないようだった。食べられそうなのはクリタケぐらいか。150メートル程登ると、山道に出会った。その辺りは植林地になっており、その作業道かと思われた。暫くその道を歩いてみたが、あまり上り坂にならなかった。しかも目指した尾根(山頂の東にある830mピークに通じる尾根で、830mピークから見ると北東に延びている尾根だった)から外れ出したので、その山道を離れて適当に斜面を登って行くことにした。程なく北東尾根に辿り着いてみると、その尾根は緩やかで歩き易かった。植林と雑木林が入り交じった尾根だった。830mピークに着いて漸く展望が現れた。一帯は少し木々が切られており、南の展望が良かった。しかしそこは止まらずに先へと進んだ。山頂までは尾根を[N]の字を書くように登って行く。そしてスタートしてから2時間近くかかって漸く916mピークに着いた。但し、そこは雑木に囲まれて展望は得られなかった。山頂部は地図で見ると、標高900m以上の地点が東西に500m程も続いているので、そのまま西へと少し歩いて見ることにした。切り株が多くて歩き難さがあったが、尾根上を小径が続いていた。南面は若いヒノキの植林地で、その南側のみ所々で展望を得た。適当な地点でようよう休憩とした。展望が良いと言っても、結構若木が視界を遮っていたので、登りごろの木を見つけて登ってみた。そこで漸くすっきりと展望を得て、東の粟鹿山を始め須留ヶ峰から藤無山へと続く山並みが一望出来た。もちろんその前群の山々も。なかなか良い眺めだった。人の訪れの少ない静かな山で、青々とした山並みを眺めるのは気分の良いものだった。帰路は同じコースを、展望の良かった830mピークまで戻り、そこでの眺望を改めて楽しんだ。そこから眺める藤無山は孤高の感じがして良い姿だった。そこからは往路とはコースを変えて南へと向かった。そしてその途中より東に分かれる尾根に入って下って行った。はっきりとした尾根道は無かったが、雑木が疎らで下草も少なく落ち着いた雰囲気の尾根だった。また傾斜も緩く楽な下りだった。そのまま続けば良かったが、最後は植林地の急斜面になってしまった。そのまま下って沢に下り着き、その沢に沿って行くと、程なく始めに歩いた林道に合流した。
(2001/12記)(2014/6改訂)(2022/3写真改訂) |