笠杉山登山は一般的には上千町からの登山コースで登るのだろうが、登山が簡単すぎるきらいがあることと、山頂までさほど展望が良くないことで、この登山コースでもう一度登る気持ちは起きなかった。ただ笠杉山には再度登りたく、そこでバリエーションルートで登ることにした。1999年11月初めのことで、そのルートは同じく上千町からだったが、882m三角点ピーク(点名・上千町)のある尾根から山頂を目指すものだった。一宮町の千町集落を貫く県道はそのまま林道(作業道・奥田谷線)となって笠杉山へと向かって行くが、林道には入らず千町集落を抜けた辺りの県道脇に車を止めた。まず最初の目標となる882mピークに向かうため、尾根端を西側から取り付いた。雑木の茂るやや急な斜面は地面が軟らかく、けっこう滑り易かった。その上にびっしりと朝露が付いていたのも気になった。尾根上に出ると傾斜は緩くなったが、今度は灌木の小枝に煩わされることになった。暫くは小枝を払い除けながらの登りが続いた。東側は植林帯、西側は雑木帯の尾根だったが、その植林帯と雑木帯が入れ替わったと思うと、程なく西面に伐採地が現れた。そこからは素晴らしい展望が広がっており、宍粟の千メートル峰はほとんど見えているのではと思えるほどだった。特に間近に見える大段山の姿が良かった。また遠くには氷ノ山も見えており、そちらは山頂部を雲に隠されていた。この風景を見ながらの尾根歩きが暫く続いた。882mピークを過ぎ、東隣りの920mピークを越えると尾根は北へと曲がった。そこからは東面が伐採地となり、笠杉山の山頂部が望まれるようになった。その右手は段ヶ峰へとつながる尾根が続いており、そして更に千町ヶ峰も望まれた。伐採の跡地とあって灌木がはびこっており、またイバラにもよくひっかかった。そこを登り詰めた位置が950mピークだった。そこより尾根は二手に分かれるが、当然東の笠杉山山頂へと向かって行く。東に向かい出すと尾根は緩やかになり、穏やかな雑木林の風景が広がった。紅葉は見頃ではと考えていたのだが、まだ五分程度で、どうやら初秋の異常な暑さの影響で遅れているようだった。また遠くから見たときはきれいに見えていても、近づくと意外と色合いが悪かった。この尾根も南が開けており展望は良かった。 尾根にはうっすらと尾根道が見えていたが、尾根も中程まで進むとはっきりとした尾根道となった。もう気楽なもので、道なりに尾根を登って笠杉山山頂へと出た。こうして二度目の山頂に立ったが、好展望の尾根を歩いて来たことで、前回の展望の悪い山との記憶はどうやら払拭されたようだった。但し山頂は雑木が視界を遮っており、相変わらず展望は悪と言えた。それでも辺りを探るうちに、樹間を通して粟鹿山から三国岳、千ヶ峰の山並みを見ることが出来た。紅葉の期待こそ外れたが、静かな山頂でのんびりとひとときを過ごした。下山は千町からの一般コースを下ることにした。まずは段ヶ峰につながる尾根を下って大乢峠へと向かう。その下りを始めてすぐの位置で、北東向かいの924mピーク(点名・絵本)が木立を通して望まれた。峠までの道はやや不確かな所もあったが目印があって迷うことは無かった。大乢峠には地蔵が置かれていた。そこからは植林帯の中をはっきりとした登山道が続いている。緩やかで歩き易い道だった。登山道を下りきると 造成中の林道に出会ったが、これは作業道・奥田谷線が延伸中のもの。後は林道を歩いて駐車地点へと戻った。なお林道そばに立てられていた標識には、笠杉山を点名の「藤尾峠1032m」で記されていた。
(2002/1記)(2012/3改訂)(2020/7改訂2) |