一山の再訪は雪の季節だった。前回とは違ったコースでと考えて、高野峠からの尾根コースを歩くことにした。高野峠へは一宮町側から近づこうと、一宮町の中心部を抜ける県道八鹿山崎線を走って行ったが、町内にには雪のかけらも見られなかった。峠へは国道429号線で向かうのだが、いつもの季節なら雪のために通行不能になっているのに、その入口にも雪は無かった。車で行ける所まで行こうと進んで行くと、徐々に雪が現れるもさほど増えることは無く、スタッドレスタイヤのおかげもあって高野峠の位置まで登れてしまった。峠で15センチほどの雪だった。国道を早くから歩き始めることを覚悟していたのだが、大助かりだった。峠は標高750mほどあって山頂との標高差は少なかった。そのため歩き始めても尾根を登ると言う感じでは無く、山稜を進むと言った感じで植林地の緩やかな斜面を登って行った。一帯の山肌は雪に覆われており、尾根道らしきものは見当たらなかった。植林の間にもクマザサが疎らに生えており、これを押し分けて進んで行った。樹林はときに植林から雑木林に替わることもあったが、下生えのクマザサは消えず、逆に密生し出した。一山山頂までに小さなピークを二つ越すが、二つ目で尾根の方向は北に少し折れ曲がった。その頃より雪も徐々に増えて、クマザサが雪の下に漸く隠れ出した。下りきって一山との鞍部に着き、その登り返しの辺りから靴が何度も雪の下のクマザサに潜り出したの。そこで漸くワカンを履くことにした。ただ雪の量が中途半端なため、ワカンを履いても潜ることに変わり無く、クマザサの中に腰まで潜ることもあった。そのためゆっくりとしか登っていけなかった。歩くのには苦労しても、冬枯れの雑木林にクマザサの一部が雪面に覗いて、そこに鹿の足跡が点々と続いている様は景色としては悪く無かった。山頂間近でまた植林地となり、歩き始めてから2時間ほどかかって漸く山頂に着いた。三角点のある最高点の位置こそ樹林に囲まれていたが、そこより少し北に進むと、伐採地に出た。伐採地は笹原になっており、すっかり雪に覆われて真っ白だった。雪の量は50センチを越えていそうだった。そこは素晴らしい展望地でもあるので、適当な位置まで進もうとすると、またクマザサに一歩一歩膝上まで潜ることになった。それでも見頃な所まで歩いて休憩とした。西には黒尾山から植松山、三室山、氷ノ山と、千メートルを越える山並みがくっきりと眺められた。そして北を見ると、眼前に阿舎利山、三久安山がどっしりと構えていた。この眺望を十分に楽しんで昼どきを過ごした。下山は往路を辿って戻った。この下山は雪上の足跡を辿るだけなので、いたって気楽だった。但し気温が上がったことで植林地では雪解けの滴が頭上から終始落ちて来た。往路でも多少はあったのだが、この下山はひどく、まるで雨中を進むようだった。この日の登山では途中の895mピーク(点名・馬見塚)と一山山頂とで二つの三角点を見るはずだったが、どちらも雪に隠されて確認出来なかった。
(2001/12記)(2006/7改訂)(2021/12改訂2) |