段ヶ峰の山頂に立つと、西に間近く見えるこの杉山の長閑なピークがいつも気になっていた。そのまま足を延ばしてみたい気持ちも起きたが、クマザサの繁る尾根をヤブコギして1kmほど歩くことにためらっていた。このピークをどうやって登ろうかと考えて地図を眺めて注目したのが杉山の西にある尾根だった。杉山には直接つながっていないが、北から回り込むようにしてつながっており、途中には点名・口田谷(四等三角点)もある。
訪ねたのは、1998年9月中旬。台風5号が近づいており、多少不安定な天気の日だった。一宮町上千町の集落に入り、生野町まで千町峠を越して延びる千町林道に入った。その千町林道を少し進むと千町ヶ峰の山頂まで続く千町ヶ峰林道が分かれるが、その林道入口近くに駐車とした。尾根は林道と平行しているが、尾根に取り付くために渓流を渡ろうとした時、ハプニングが起きた。パートナーが岩に足を滑らして、渓流にどっぷりと浸かってしまったのである。全身を濡らしてしまったばかりか、どこで打ったのか額に大きなタンコブも作っていた。あわてて車へ戻って着替えをし、靴はズック靴に履き替えた。そして改めて再スタートとした。急斜面を適当に登って尾根に出ると、後はゆったりとした尾根歩きとなった。ただ尾根は緩いものの、潅木が繁茂しており、倒木も多く、なかなか歩度は上がらなかった。それに展望も無かった。点名・田口谷がある825m地点を過ぎると、少しは南の方向に展望が開けた。また尾根も歩き易くなってきた。標高が上がるに従い、北には笠杉山が、南には千町ヶ峰が良く見え出した。やがて一帯はなだらかな斜面帯となった。そうなるとどこを登っても同じなので、稜線を目指して東に向かって適当に登って行った。稜線が近づくに従い、笹が増えて来た。その笹は膝丈までしかないため、さほど気にならなかった。稜線に出て尾根なりに南へと向かって行く。少し進むとなだらかなピークに着いた。そこはまさに360度と言える絶好の展望場所だった。東に大きく生野高原が広がり、南は峰山、雪彦の山々、そして杉山は間近で、その先には千町ヶ峰が見えている。この広々とした景色に目をやりながら進んで行くのは心楽しいことだったが、せっかくの好展望も曇天で薄暗く見えているのは残念だった。尾根の小径は笹原の中のケモノ道程度で、それも時に分からなくなったりした。また笹も徐々に丈が高くなり密生し出した。ススキも増えて来た。その中を杉山に向かって適当に進んで行く。なだらかな尾根を南に進むだけだったが、杉山が間近になると笹はすっかりクマザサとなって、けっこう歩き難くなった。杉山に着いてみると、そこは中央部の笹が刈られて、休憩には手頃な所だった。ようやく腰を下ろして、周囲の展望を楽しみながらの昼食とした。その休憩の間に雨雲が増え出して、空は一段と暗くなって来た。ガスも湧き出し、遠方はもう雨のようで雷も鳴っていた。この杉山からは更に足を延ばして段ヶ峰まで行きたい気持ちを持っていたのだが、これでは諦めざるを得ない。そこで下山は杉山から南に延びる尾根を下ることにした。その下り出し直後に、突然大雨となった。始めは尾根を辿っていたが、早く林道に下り着こうと途中からはクマザサの斜面をむりやり下って行った。林道に出ると、後は林道を歩いて駐車地点へと戻るだけだったが、その頃には雨は小雨に変わっていた。
(2002/4記)(2007/1改訂)(2018/11写真改訂) |