今は宍粟市で一つになっているが、旧千種町と旧波賀町を分ける尾根は北に行くほど高度を増して三室山へと続いている。その尾根の途中に1108mと標高点の付いたピークがありちょっと興味を持っていたが、その山に荒尾山と名の付いていることを知ったのは千種町の資料からだった。そうなると登りたい気持ちが俄然湧いて来た。向かったのは1996年11月の好日だった。コースとしては山の名の付いている南麓の荒尾集落からで、地図の破線路を利用して登ることにした。千種町に入って荒尾集落への枝道に入ると、その道は集落を抜けるとそのまま林道となったが、林道を少し走った所にあった駐車スペースに車を止めた。
歩き始めた直後、鉄山跡の標識を見て、少し脇道に逸れてその鉄山跡に立ち寄った。そして再び林道に戻って林道を進んで行った。林道は20分ほどで終点となったが、その先も渓谷沿いに小径が続いていた。その小径も見えなくなると沢も消えかかってきたので、そこで旧町境尾根を目指して杉の植林帯に取り付いて急斜面をひたすら登って行った。旧町境尾根に出るとそこには細々と尾根道が続いていた。荒尾山のピークは南東方向なので、そちらに向かって歩いて行った。下生えも少なく歩き易かった。尾根の木々は落葉樹が多く、終わりかけの紅葉が美しかった。尾根には展望の開けた所もあって、北西に植松山が間近く見えていた。山頂が近づくとごく小さなピークがあり、そこは東半面が開けて素晴らしい展望が広がっていた。北から三室山に氷ノ山、藤無山、一山そして雪彦の山並みまで余すところ無く眺められた。どの山も紅葉に彩られて目を楽しませてくれた。程なく着いた山頂も好展望地だった。特に北西に対峙する植松山がボリューム感のある山容で素晴らしかった。その左手には日名倉山も見えていた。そうして紅葉の静かな山中を楽しんだ。下山は南西へと隣の小ピークまで町境尾根を歩き、その小ピークからは西へと小さな尾根を下って行った。尾根は自然林になっており、尾根全体が紅葉して燃えるような景観を見せていた。また木々も適度な間隔で生えていたので歩くのも楽だった。赤く色付いたカエデが多く、その紅葉を楽しみながら、そして落ち葉の踏み心地も楽しんでゆっくりと尾根を下った。下りきって沢沿いの小径に出ると、もうそこから林道終点は近かった。
(2002/1記)(2012/5改訂)(2022/1改訂2) |