この日は宇都宮市内に仕事で来ていたのだが、午後に自由時間が出来た。休日でもあり車も有ることなので、近くの山でも登ろうと考えた。そこで決めたのが日光連山の展望の山と知られている鳴虫山だった。日光市街に近いことでもあり、午後からでも簡単に登れそうだった。急いで行こうと、有料道路の日光宇都宮道を走った。進むうちに日光連山が見えてきたが、その上空には薄黒い雲が広がっており男体山の山頂はすっぽりと雲に包まれていた。ただその右手に続く大真名子山から女峰山、赤薙山への山並みはすっきりと見えていた。それも徐々に雲がかかる気配が見えていたのは少々気がかりだった。日光市内に入り鳴虫山に近づくと、登山口の標識が見えた。その近くに駐車出来る所はないかと探ると、図書館が休館日でうまく駐車することが出来た。この鳴虫山は登山口まで住宅地が続いており、幹線道路も間近にあり、すっかり市街地の山と言ってよかった。しかし登り出すと、すっと山中の雰囲気となった。植林地の中を登って行く。ササ地を抜けると周囲は雑木林に変わってきた。そしてこの尾根で独特の雰囲気をかもす木の根がむき出しの風景が現れた。これが長々と続いた。多くの人が登った結果として地表の土が削られてしまったためと思われたが、それだけとは思えないほど多くの木の根が現れていた。登るほどに前日にでも降ったものか、うっすらと雪を見るようになった。また裸木の枝越しに日光市街も見えて、本当に市街地のそばにあることがよく分かった。上空が曇っているだけに薄ら寒い中を、早足気味に登って行った。やや急坂はあったものの、はっきりとした尾根道が続くため、地図を持たないことも気にならなかった。高度計で高度をチェックするぐらいだった。標高が1000mほどになると、尾根の雑木もばらついてきたが、すっきりとした展望は現れなかった。そうこうするうちに登山口より70分で山頂到着となった。山頂は少し開けており、ベンチや展望台も置かれて雰囲気としては悪くなかった。ただ上空はすっかり雲って寒々としており、気温を見ると5℃だった。まずは展望台に立って、この山に入って初めてと言える展望を得た。展望台の前の雑木がけっこう視界を遮っており、すっきり見えるとは言えなかったが、北向かいの日光連山が良く見えていた。ただ残念なことにもうその山稜はすっかり雲に隠されていた。日光連山以外では、北東方向では塩原山地が青空の下にくっきりと見えていただけに皮肉なことだった。日光連山の上にも青空が見え出したので、少し天気は回復するのではと30分ほど山頂に佇んでいたが、雲の動きはほとんど無く、やむなく下山することにした。午後も15時を回っていることでもあり、往路を戻ることにした。このコースでは途中に神主山(こうのすやま)と呼ばれるピークがあるはずであり、そこが尾根での一番の展望地とのことだったが、往路ではなぜかそのピークを通らずに来てしまったようだった。迂回路を歩いたようだった。そこで下山では見過ごさないように慎重に下って行った。すると中間辺りを過ぎてササ藪が近くなった所で、登山道が分岐していた。上り坂になる方を選ぶと、その先のピークが神主山だった。なるほど視界を遮る木は少なく、日光の山並みがすっきり見える展望台だった。そこでも暫くの間、雲に隠された日光の山並みを眺めていた。
(2004/4記)(2025/6写真改訂) |