北陸の山となれば、白山とともに「日本百名山」にも選ばれている荒島岳がまず視野に入ってくる。他にも魅力的な山が周辺に多くあるが、ともかく荒島岳に登ってみようと目指したのは1998年10月初めのこと。姫路の自宅を早朝の5時前に出発すると、9時には登山口に着くことが出来た。この日は朝からほとんど雲の見られない快晴の空が広がっており、陽射しが眩しいほどだった。スタート地点は福井県大野市の勝原(かどはら)スキー場の駐車場から。暫くはスキーリフトに沿った石ころだらけの荒れ道を登って行った。とかくスキー場の道は荒れて風情が無いが、ここも同様に殺風景であった。但し、展望は良かった。特にリフト終点はなかなかの好展望地だった。そこを過ぎて樹林帯に入って行く。急斜面と言えるほどの角度でも無く、まずまずの上り坂が長く続いた。特筆ものは、見事なぼかりの自然林が終始コースを囲んでいたことで、中腹まで登るとその自然林は主としてブナが占めるようになった。紅葉期に少し早いのは残念だったが、それでも素晴らしい景色だった。坂を登り詰めたところがシャクナゲ平で、そこに着いて漸く山頂が姿を現した。山頂までまだまだ高度差があった。一度下って登り返すのだが、その登りが結構急傾斜できつく感じられた。ロープを伝ったり岩に手をかけたりして登ることもあった。早く頂上に達したいと焦る気持ちで登ったが、頂上はなかなか近づかなかった。ピークとも言えない小さなピークが二つほどあって、それを越して漸くの思いで山頂に着いた。
最後は少々へばってしまった。展望はピーク帯に近づいた頃より一気に良くなっていたのだが、それを楽しむ余裕も無く登ってきていたので山頂には期待していたのだが、その山頂はと言うと意外と殺風景な印象を受けた。全体に狭くるしい感じで、無粋な四角い建物と電波塔が二つあって奥深さを損ねていた。百名山と呼ばれているにしては、山頂の印象はあまり良くは無かった。登山者も既に20人近くが着いており、グループもあってかまびすしかった。その喧噪を避けて少し離れた場所で休憩とした。ただ展望だけはすこぶる素晴らしかった。視界も悪くなく、遠方の山々も良く見えていた。
北東の白山はボリュームがあって堂々としているし、北西には大野市街が広がっていた。西から南にかけては山また山が連なっている。 めぼしいところでは銀杏峰に能郷白山が眺められた。山頂展望は山深さも感じられて、飽きることは無かった。その山頂では風がやや強く吹いており、涼しいと言うよりも肌寒さを感じるほどだったが、火照った体には暫しのオアシスだった。その快さにのんびりと山頂で憩っていると、気が付いたときは2時間以上を過ごしていた。その頃には空は濁りが出てきており、風景の鮮やかさは消えていた。下山は往路と同じ道を戻った。山頂でたっぷり休んでいたので体力は戻っており、途中のブナ林を愛でながらゆっくりと下って行った。
なお、山頂については、無粋な廃墟の電波塔は、その後撤去されたと聞いた。
(2003/7記)(2023/12写真改訂) |