前夜は市ノ瀬キャンプ場でテント泊。この日は日曜日とあって別当出合へは一般車は入れず、市ノ瀬からバスでの移動となった。5時前よりバスの運行が始まり、3番バスに乗車となった。別当出合のバス停は登山口の近くにあり、すぐに砂防新道コースに入った。吊り橋を渡って別当谷を越すと、緩やかな尾根登りが始まった。いたずらに整備されていない道は歩き易く、楽に登って行けた。上空は快晴で、この日の天気に期待することは大だった。ゆっくりと登っているつもりでも少し早足気味になっていたのか、前を行く登山者に追いつくことが多く、何人もの登山者を追い抜いた。団体がほぼいなかったのは幸いだった。ほぼ休まず登って行く。途中、二度林道に出会ったが、林道は横切るだけだった。登山道の周囲は樹林帯が続き、展望が良いとは言えなかった。また樹林帯は喬木は少ないように思えた。登るうちに前方に白山に繋がる尾根を見るようになった。明るい尾根の上は青空が広がっていたが、尾根の右手、山頂方向から終始ガスが湧いているのが少し気がかりだった。甚之助ヒュッテを越すとトラバース気味に谷を横切り、後は少しきつい坂となった。その急坂を登り切った所が観光新道コースとの合流点で、そばに黒ボコ岩を見た。そこに来てガスは上空にもかかっているのが分かった。すぐに弥陀ヶ原の平坦地に出る。そこには広々とした風景が広がっているはずだったが、行く手はガスに閉ざされてほとんど分からなかった。後方は青空が広がっていたので、ガスが晴れるのを期待するだけだった。ガスの中、室堂までが長く感じられた。山肌に雪渓が残っているのがうっすら分かった。室堂も全くのガス帯で、うすら寒い雰囲気があった。とにかく山頂へと休まず足を進めた。そこまでもほぼ休まずに来ていたので、登る途中よりバテ気味になってきたが、なんとか山頂に到着した。その山頂に着いた時に一瞬だけガスが晴れて、西に青々とした風景が広がった。しかし本当に一瞬だけだった。後は幾ら待ってもガスは後から後から押し寄せてきた。一時的にガスが薄くなって上空より陽の射すことはあったが、消えることは無かった。山頂は強風が吹いていたので、山頂そばの白山奥宮で風避けをした。陽射しを受けると暖かさを感じたが、濃いガスに包まれているときは少し震えが来るほどの肌寒さがあった。残念なことに着替えのシャツを持ってきていなかった。一時間半ほど待っていたが、ガスは晴れなかった。そこで山頂を離れて周遊コース(お池巡り)を歩くことにした。それも周囲の風景が見えないため、登山道をただ辿っているだけだった。ガス中とあって少し心細くもあった。その周遊コースも血ノ池辺りより高山植物が増え、風景が和んできた。少しはガスも薄れたようだった。途中、百姓池のそばで昼食とした。その辺りは色とりどりの多種の高山植物が咲いており、気分も少しは晴れた。時にガスが薄れて周囲がはっきり眺められた。まずは一巡りをして室堂に戻ってきた。ガスの状態は朝に着いた時と変わっていなかった。諦めて下山に移った。下るほどにガスは薄れて、弥陀ヶ原では上空はすっかり晴れていた。真っ青な空と緑鮮やかな草原の風景だった。振り返ると室堂も見えており、ガスは白山山頂部にかかっているだけだった。ガスは別山の山頂部にもかかっていたが、他の山々は澄み切った空の下にくっきりと姿を現していた。風は涼しく空気も爽やかで、急激に気分が和んだ。黒ボコ岩では暫し休憩をとった。そのとき白山のガスも徐々に薄れ、山頂までくっきりと現れた。思わず山頂に戻ろうかと思ったが、程なくガスが再びかかり出した。黒ボコ岩からは観光新道コースに入った。このコースは丈の低いササか灌木しか無く、正に展望コースと言えた。左手に別山が見えており、前方は加越の山々が広がっていた。ただ陽射しが強烈だったため、涼しい風が現れると足を止めて何度か休憩をとった。殿ヶ池ヒュッテを過ぎると樹林帯の急坂となって、後は休まず一気に下って行った。その下りは結構きつく、また長くも感じられた。改めて白山の大きさを知る思いとなった。別当出合の登山口に着くと、発車しかけのバスがあり、慌ただしく乗り込んだ。17時にテント場の撤収を追えると、帰路についた。23時に姫路に帰着する。
(1999/10記)(2024/9写真改訂) |