10月1日は二度目の日曜日。一週目は自重していたのだが、二週目となるともう体が自然の中を歩くことを欲してきた。そこで近くに手頃なところはないかとガイドブックの「地球の歩き方」をみたところ、リーズの町の近くには、けっこう国立公園(ナショナルパーク)のあることが分かった。中でも近いのがヨークシャー・デイルズ国立公園で、その広いデイルズの中心に近いセトル(Settle)の町を訪ねることにした。リーズ市街を離れてA65を走って行くと、イルックリー(Ilkley)の町を抜けて、漸く周囲に丘の風景が見られるようになった。伸びやかさのある風景に、集落の佇まいも落ち着きのあるもので、好い雰囲気のドライブだった。そのような風景に似つかわしい町がセトルだった。まずは町の中心部にある駐車場に駐車した。どこからハイキングを始めてよいのやら全く分からないので、インフォメーション・センターを訪れて尋ねてみた。だが悲しいかなネイティブ・イングリッシュはほとんど分からない。そこで地図を買い求めて、その上でコースを教えていただいた。説明通りに家並みを抜けると、背後の丘に入って行く道をうまく進むことが出来た。ただその道は丘の裾を巻いているだけだったので、途中で現れた真っ直ぐ丘に向かう道を登ることにした。牧草地を抜けて行くが、やがて道は不確かになってしまった。それでも踏まれたらしい跡が牧草地に付いていたので、それを辿って登りを続けた。羊や牛の糞がよく落ちている。登るほどに背後に風景が広がった。まさにここがイングランドですと言わぬばかりの田園地帯の風景だった。小さな村が寄り添う緑濃い風景は、ただただ美しいと思ってしまった。暫し足を止めて眺めていた。やがて丘の上に出るが、その先は全くの牧草地帯で、緩やかな丘がどこまでも続いていた。そして岩肌が所々露出した小山と言えるほどのピークも現れた。暫くそのような牧草地帯を歩いたが、はっきり道と分かるところもあれば、踏み跡も判然としないところもあり、どうやらその程度の道がフットパスと呼ばれるトレイルコースらしいと納得した。辺り一帯で羊や牛がのんびり放牧されている。ハイカーもそこそこ歩いていた。広
くうねった丘がどこまでも続くが、石積みの牧柵がその中を縦横に付いており、それを所々で越さなければならない。ゲートの付いた柵も有れば、跨いで通る柵もある。羊などのいる風景と言い、ハイキングと言うよりも、広大な牧場を歩いている感じだった。来たかぎりはピークの一つも登ってみようとその頂に向かおうとしたが、石柵を何度か越さなければならず、なかなかピークに近づけない。とうとう諦めて眺めの良い丘の上で昼食とした。食後は教えられたルートを辿って行く。小さな丘を越したりするが、地面の柔らかい牧草帯を登るのは、結構脚力を使うことを知った。そのうちに道も不確かとなり、前方の風景も地図上の地形と違っていることに気付いた。何度か考えた末、進むべき方角は北でなければならないのに、西に向かわなければと思いこんで歩いてきたことに気付いた。慌てて方向修正するが、大きく時間をロスしてしまった。正しいコースに出ると、はっきりした道となっており一安心する。そのまま進んで行くと、道は車道のようになり、風景も小山の少ない田園風景に変わって来た。まだ教えられたコースの中程でしかなく、総てを辿れば遅くなってしまいそうなので、残念ながらハイキングを切り上げることにした。そこで適当に牧草地をエスケープして戻ることにした。適当な牧柵の切れ目から牧草地に入り、突っ切って下って行くと、やがて別のフットパスに合流した。そして風景も登りのときに見たものと同じものになり、セトルの町に近づいていることが分かった。緑と村の佇まいが良く調和しており、絵に描いたような風景を見ながらの下りだった。麓まで下り着くと、そこはLangcliffe村であった。セトルに向かって一度車道を歩いたが、すぐに遊歩道が現れたのでそれを歩いて行くことにした。やがて遊歩道は最初に歩いた道に合流して、セトルの町へと入って行った。
(2004/4記)(2008/10改訂)(2018/12写真改訂) |