この日は午前中は雨模様の予想だったのだが、青空が拡がっているのを見て、同じく晴れているだろうとヨークシャー・デイルズの北部を急きょ目指すことにした。M1ロードからA1と走っていても空は晴れたままだったが、行く手の北西、ヨークシャー・デイルズ北部の空は雲が多く見られた。スコッチコーナー(Scotch
Corner)でA1を離れ、リッチモンドの町を抜けて、B6270を走って行く。この道の道中はほとんど家が見られず、ちょっと林道に入り込んでしまったのではとやや不安に駆られたが、やがて
Grinton村が見えて一安心。だが、ここまで明るい陽があったのに、この村にかかる手前辺りより、南の空に雲が増え出した。リース(Reeth)村に着いたときは、太陽の周囲はほぼ雲に閉ざされてしまった。時おり雲が割れて陽射しが現れたが、またすぐ雲に閉ざされた。リース村は起伏に富んだ丘の高台に有り、小ぎれいな商店が周囲の丘と良く調和しており、感じが良かった。村の中央の駐車場に駐車して、目標のカルバーヒル(Calver
Hill)を目指した。標高487mの丘である。空はほぼ曇り空となっていたが、時おりは北向かいの丘に陽射しが当たっていた。村中を通る道を西に歩いて行くが、少し通行量の多い道だった。やや煩わしく感じたので、目標の丘は遠くなるが、その丘につながる左手の緩い丘から登ることにした。フットパスの案内板を見たが、フットパスらしき道は見当たらない。そこで牧草地の斜面を適当に登ることにした。登るほどに強風が吹き付けて来た。暫く登ると石壁が尾根方向に続いていたので、風を避ける意味もあってその壁沿いを登って行った。その壁沿いにはトラクターの跡もあって、歩きやすかった。そろそろ昼が近づいており、石壁の切れる手前で、村で買い求めたパンで昼食を採ることにした。とにかく強風が吹いていた。簡単に食事を済ませると、石壁を離れてヒースで覆われた丘をひたすらピークを目指して登って行った。フットパスは見当たらず、ヒースの疎らなところを選んで進むのみ。ピークの手前でやや急傾斜となったが、この辺りに来て少し空が明るくなった。そしてピークに着いたときに、ちょうど陽が射して来た。体が吹き飛ばされそうな強風の中でピークに立った。陽はピークにのみ当たっており、360°の展望は曇ったままだった。程なく陽は消えて薄暗くなった。風を避けて、北側の斜面で小休止とした。もう陽射しの回復は望めそうも無く、程なく下山に向かった。帰路は南に向かって適当に斜面を下って行く。やや急なヒース帯を抜けると、中腹に来て麓と平行して続くフットパスに出会った。リース村へつながると思え、それを歩いて行く。南側の麓には小川が流れており、また南向かいの丘には適度に農小屋などがあって、晴れておれば明るく伸びやかな景色であるのにと残念に思う。フットパスはやがて丘を越えて北側に向かい出したので、後はまた適当に牧草地を下って車道に出た。リース村はもう近かった。帰路、リッチモンドの町に立ち寄った。中心部には市が立ち、結構にぎわいのある町だった。また町の背後の丘に古城が見えたので立ち寄ってみると、有料だったが塔の上に立つことが出来た。そこからの眺めが素晴らしかった。リッチモンドの町並みが一望で、周囲の風景と調和のとれたその佇まいの美しさは、町に灯がともり出したこともあって、古い名画を見ている思いだった。
(2004/6記)(2010/7改訂)(2019/2写真改訂) |