大晦日を明日に控えた30日は、朝から雲一つ無い快晴の空が広がっていた。前夜に天気予報を確認していなかったため、夜明けを待ってどこに出かけるかを決めることにしていたので、出発が9時半と遅れてしまった。そして出発時ではピーク・ディストリクトのバクストン周辺でもと考えてリーズを離れたのだが、いざM62ロードを西に走っていると、快晴の空がどこまでも広がっている。これを見て、行き先を急遽レイク・ディストリクトに変更することにした。このM62を走っているときに、素晴らしい光景を見た。ピーク・ディストリクトとヨークシャー・デイルズに挟まれた辺りは少し高地になっているのだが、その辺りの樹木が総て霧氷になって、純白に輝いていた。驚くほどの美しさだった。高速道の街路樹まで真っ白である。前夜に濃霧があって、それが気温の低下と無風で、この霧氷になったと考えられる。走行中の外気温は−6℃であった。この霧氷はM6ロードが近づくと見られなくなった。レイク・ディストリクトでは、まだ訪れていなかった
Coniston Water湖の西岸を南側から入って、北に向かって適地を求めて行った。しかしこの湖の西岸は低い丘ばかりで、ハイキング向きには見えなかった。途中、湖水そばのピクニックエリアで休憩したのみで、北を目指してコニストーンの町を訪れることにした。コニストーンに近づくと、町の北西にある山群が大きく迫って来た。山肌は総て雪をかぶって白くなっている。町に入ると駐車場はほぼ満車であったが、なんとか一台分のスペースを見つけた。朝の出発が遅かったうえに、のんびりとドライブしてきたので、既に13時が近くなっていた。そこで高峰は諦めて、町に一番近い山でも登ろうとその方向に向かうことにした。町は洒落た建物が多く、雰囲気は悪くなかった。A593を横切り、徐々に山に近づいて行く。農家の前を通りゲートを抜けると、フットパスが始まった。少し歩いて行くと、右手に車道が見えた。地図で確かめると、その道も谷を奥に入って行くので、そちらを歩くことにする。やがて最奥の村が見えて来た。どの家もB&Bのように見える。ここに来ても、まだ一番近い山に登るつもりだったので、村の奥から出ているフットパスを歩いて取り付き点を求めた。少し歩くと雪が20cm程になってきたので、スパッツを着ける。間もなく踏み跡が怪しくなって来た。また谷への傾斜もきつくなって来た。踏み跡を探してそれを辿っていくと、目的の右の山とは離れ出してしまった。それでも足跡を追っていくと、どんどん左手に向かい、するとメインコースと思われる何人もの足跡のあるフットパスに合流した。主ルート(The
Oldman of Coniston へ向かうルート)がその方向であることは分かっていても、時間の関係で諦めていたのだが、ここまで来たのだから行けるところまで行こうと、メインルートを進むことにした。左手に標高800mはある山群が大きく迫っている。雪の上はまだ歩き易いのだが、雪が消えている所は水が凍って滑り易くなっており、注意しながら登って行く。結構多くのハイカーとすれ違った。このまま歩くとどの地点まで行くのか分からなかったのだが、かまわず登って行くと、やがて池(Levers
Water)に出会った。こんな所に池があるのかと、意外であった。この池のそばを歩いているときは誰とも会わず、やや不安になったが、池を過ぎると前方に見える一つのピーク(745m)に多くのハイカーが居るのがわかった。その純白のピークが陽射しを受けて眩しく光っている。今日はそのピークまでと目標を決めた。ピークに近づくと傾斜がきつくなり、雪の量も多くなって来た。それでも30cmほどだが、久々にあえぎながら登ることになった。ピークに着くと、そこには素晴らしい展望が待っていた。北には純白の山群がスカイラインを作っている。両側にはこのピークから続く山々が、また登ってきた方向を見ると、足下に
Levers Water、遠くには Coniston Water も見えていた。真っ青に澄んだ空の下、この風景を十分に味わった。ピークに着いたときは、一帯には誰もいなかったが、周辺の山々にまだ多くの人を見かけた。午後も3時となって、すでに陽は山に隠れようとしていたが、薄暗くなってからでも降りるつもりと見える。やや冷たい風が吹いていたが、陽射しがあるので気にならない。太陽が西の山に隠れて暫く経つまでピークに佇んでいた。下山はメインコースを村までたどる。この下山中は、コースの前後に多くのハイカーを見た。池を過ぎる頃より薄暗くなり、足下がはっきりしなくなってきたので、凍った坂を滑らないようにと細心の注意が必要だった。コニストーンの町に着いたときはすっかり暗くなっていた。
(2004/9記)(2016/8改訂)(2019/8写真改訂) |