養久山はJR竜野駅の北、2kmほどの位置に尾根を東西に長く延ばしているが、最高点でも100mに満たないため、その姿は単なる丘にしか見えない。そのごく低山の尾根にハイキングコースが「養久山遊歩道」の名で作られているのは、尾根に点在する古墳を巡ることを目的としたものと思われる。ハイキング案内板を見ると、古墳の数は40近くあり、数十メートル置きにありそうだった。その古墳散策を2010年12月のクリスマスの日に楽しんだ。
この日の天気予報は晴れときどき曇りだったが、朝の空はその予報よりも少し悪いようで、空の多くを薄黒い雲が占めていた。また播州の北部辺りは荒天になっているようだった。そこで近くで軽いハイキングを楽しもうと考えて、養久山に向かった次第だった。スタート地点は尾根の東端に近い日吉神社からとする。その日吉神社に着く頃には空には少し青空が見られるようになっており、ときおり陽射しが現れていた。神社の境内に車を止めて、神社の右手から始まる遊歩道を歩き出す。数分も歩けば尾根に出たが、そこから山頂方向へは向かわず、一度反対の東へと歩いて、東端側の登山口に下りた。その登山口の様子を眺めた後、引き返す形で改めて東登山口から尾根歩きを始めた。単に東端の登山口から歩き出したいとの、急な思いつきだった。雑木林の尾根はすっかり落ち葉で覆われており、サクサクと落ち葉の踏む音をさせながらの尾根歩きだった。これに小鳥のさえずりだけが聞こえておれば申し分無いのだが、尾根は意外とうるさかった。それは尾根の北側を走る山陽自動車道からの音で、ちょっとした騒音公害だった。山は決して静かではないと言えることが、この尾根歩きで分かった。尾根道をずっと雑木林が囲んでおり、展望は良くなかった。ときおり北の方向に的場山や大蔵山が雑木林の隙間から眺められる程度だった。南も揖保川町の田園風景が小枝の隙間から見える程度だった。尾根はひたすら緩やかに続くので、ハイキングの中でもごく軽い部類だった。また古墳もはっきりとした形のものは少なく、単に墓だったり丘の一部が僅かに盛り上がっているだけに見えるものがほとんどだった。そのため、古墳巡りをしていると言うよりも、尾根の優しい雰囲気を楽しむことを目的とした方が良さそうだった。その尾根のポイントの一つが乙城址で、山頂から500mほど手前のピークにあった。ごく小さな城跡だったが、南に向かって少しは展望があり、また近くに東屋も作られて、休憩場所にもなっていた。そこを過ぎると尾根はいっそう緩やかになり、古墳も一桁台の番号になってきた。送電塔の建つ5号墓を過ぎ、4号墓、3号墓と通過して、山頂にあったのが2号墓だった。三角点は数メートル離れた位置にあり、山頂は標高としては100mを僅かに越しているのではと思われた。そして更に数十メートルほど進んだ所にあったのが、養久山の古墳を代表する1号墳だった。全長32mの前方後円墳で、その形ははっきりとしており、ようやく立派な古墳に出会えた思いになれた。ベンチも置かれて休憩出来るようになっており、ちょうど昼となっていたので、ここで昼食とした。この頃には上空に青空が見えており、古墳は陽射しに包まれていた。暖かい陽射しの中で昼を過ごせることになったのは良かった。その1号墳の位置からは南へと遊歩道歩きを続けてふもとに下りてもよかったが、気楽な尾根歩きを今少し楽しもうと、歩いてきた尾根道を引き返すことにした。往路は陽射しが少なく、寒い中での尾根歩きだったが、帰路は陽射しを多く受けることになり、暖かさを感じながら歩けた。終わってみれば僅か2時間程度のミニハイキングだったが、養久山を十分に楽しめて満足だった。それにしても播州の低山はどうも人が少ないようで、この養久山も終始パートナーと二人っきりだった。
(2011/1記)(2019/6写真改訂) |