揖保郡太子町は姫路市の西部と接しており、京見山、檀特山を町境としている。この二つの山は比較的大きく存在感があるが、太子町の中心部にも周囲を住宅地に囲まれた小山が、劣らず目立っている。これが立岡山で、周りが平坦なことだけでなく、山頂に巨大な配水池があることで、太子町と言わず姫路市西部、龍野市域からでもすぐそれと分かる目立つ山である。この立岡山にはふもとから車道が山頂まで通じており、ごく低山と言うこともあってハイキングの対象にはなり得ない。ただ立岡山の山頂に立てばどのような風景が広がっているのだろうとの興味で、2005年6月初め、日曜日の昼前に訪れた。この立岡山を新幹線が貫いており、その北東側から車道が始まっているのだが、新幹線と太子西中学校に挟まれた位置になる。車をその車道の入口辺りに止めようと近づくと、うまく車道と新幹線の間にスペースがあった。その先はフェンスで囲われていたが、トンネルの点検路が続いていた。そこより歩き始めたが、車道の方もすぐにクサリが張られて、車は進入出来なくなっていた。そのクサリに近い位置に、小さな神社が佇んでいた。天満宮の名が付いていた。その横を通って登って行くが、ごく緩い坂の舗装路で続いた。途中に案内板があり、この山上に石蜘蛛(いしくも)城があったと記されていた。道そばには点々と桜の木がある。昼どきの暑い陽射しの中を歩くので、すぐに汗ばんで来た。しかし本当に小さな山なので、10分も歩けばもう山上に出た。そこに見えたのは強大なタンク(配水池)とそれをぐるりと囲む擁壁だった。擁壁の高さは1メートルも無く、上を歩けるようになっていた。ここに城があったことを思うと、城壁を模したようにも思われた。その擁壁上に立つと素晴らしい展望が広がった。東には檀特山に京見山、南は瀬戸内海、西には御津山脈から天下台山、北西から北の方向は木立が視界を妨げていたが、それでも新龍アルプスや、遠くに目をこらすと黒尾山も見えていた。この日はまずまず落ち着いた視界で、暫しこの展望に目を遊ばせた。ところで山頂の一隅に石仏が数体並んで花を手向けられていたのだが、さすが水槽が山頂にある山だけに水道がそのそばに付いていた。それにしてももう少し標高があれば、ハイキングとして楽しめるのにと思わずにはいられない。そして下山時に出会ったのは孫を連れたおじいさんで、3才ぐらいの子供でも十分に登れる山だと納得させられる気楽な山だった。
(2005/6記)(2018/9写真改定) |