2023年7月の下旬に入ったとき、久々に小冊子「里山の自然を学ぼう!」を開いて目にとまったのが「愛宕山みはらしの森」だった。愛宕山の名を見て地図で確認すると、円山川と六方川の合流する位置に近い小ピークを指しているようだった。真夏の登山は短時間で登れる山にしたいと思っていたので、この愛宕山はその希望に叶う山と言えた。
向かったのは7月27日の木曜日のこと。梅雨明け以降は好天が続いており、この日も朝から快晴だった。播但道から豊岡道へと入り終点の但馬空港ICで降りると、国道312号線に入って円山川の左岸路を走った。一度豊岡の市街地に入ったが、再び円山川の左岸路に出たとき対岸側に小さな山を見た。それが愛宕山のようだった。その愛宕山へは堀川橋と六方橋を渡って近づいた。南麓の位置に着くと、そこに登山口標識を見た。その登山口の前に1台分の駐車スペースを見たので、遠慮しながらもそのスペースに車を止めた。なお「愛宕山みはらしの森」の地図には南麓側から2コースが描かれており、駐車地点からのコースは「八坂の道」コースだった。気温は既に35℃に近づいており、その酷暑の中をスタートした。始めに石段があり、登った先に八坂神社が建っていた。登山道はその近くから始まっており、緩やかな上に道幅も十分にあった。有り難かったのは周囲の樹林が鬱蒼としていたことで、終始木陰の中を登って行けた。標識もあってそれに従って登ると石仏を見るようになり、登山道はいかにも参道と言った趣になってきた。そして登山口から14分で愛宕神社に到着した。そこが愛宕山の山頂と言えそうだった。その広い境内では巨木が目立っており、そのそばの説明板を見ると一帯は鶴城跡のようだった。ベンチも置かれており、そこに座って暫しの休憩とした。ほのかに涼しい風を受けながらだった。残念だったのは登山道でも山頂でも展望が無かったことで、ネット情報では山頂の展望は良いとされていたのだが、木々の生長によってその展望はほぼ消えていた。無理に探れば木々の隙間から豊岡市街が眺められたが、展望と言えるほどの眺めでは無かった。僅かな時間で山頂に立ったことでもあり、休憩を済ませると「愛宕山みはらしの森」を散策することにした。出来れば山頂から1kmほど離れた161mピーク辺りまで歩くことにした。遊歩道を辿ることを心がけ尾根道歩きを開始した。城跡らしく段差が大きくなっている地形も現れた。そこを過ぎた先の110mピークで東屋が現れたが素通りする。歩くうちに城跡らしさは見えず、緩やかな自然林の尾根をただ歩く感じとなった。蒸し暑さを我慢すれば、ほぼ自然林の木陰を歩けるのは良かったが、相変わらず展望の無い尾根歩きだった。尾根なり道なりに歩くと東へと向かうようになり、120mピークに着いた。そこに着いて近くに送電塔が建っているのを見た。そこまで展望に恵まれなかったこともあって、送電塔に立ち寄ってみることにした。その送電塔(豊岡線46番)の位置に下りると、期待通りに展望が得られた。南東方向に東床尾山と西床尾山の並ぶ姿が眺められた。ただそこは木陰が無かったため、休むには適していなかった。そこで120mピークに戻って木陰で休憩とした。一休みを終えると予定通り161mピークまで歩くことにした。歩き出してみるとけっこう陽射しを受けることが多くなり、すぐにバテ気味になってきた。それでもその尾根歩きでは展望に恵まれて東床尾山の左手に法沢山が眺められた。ようようの思いで161mピークに着くと、木陰を求めてバテた体を横たえた。そして体力の回復を図った。休憩を終えると予定通り歩くのはそこまでとして、歩いて来た道を引き返した。ただその頃になると西の空には雷雲が広がろうとしており、ときおり雷の音を聞くようになっていた。雨に降られたくないため少し焦る気持ちで引き返すことになった。陽射しを受けた上に焦って歩いたためか、120mピークまで戻ると小休止をとる必要があった。東屋を過ぎて愛宕神社まで戻ると、その先も道なりに下ったのだが、途中で送電塔が現れた。そのことで往路とは違うコースを下っていることに気付いた。知らぬ間に「椎の道」コースに入ったようだった。その「椎の道」コースは往路の「八坂の道」コースと比べるとずっと展望が良く、豊岡市街の方向が広く眺められた。その西の空は既に夕立になっているようで、すっかり黒い雲で覆われていた。雷の音も絶えずしていた。雨に降られないうちに下山を終えようと、展望はちらりと見るだけにして下山を続けた。麓に下り着くとそこは船町の一角で、そこにも登山口標識が立っていた。その登山口から「八坂の道」コース登山口までは数分の距離だった。願い通り雨に遭わずに戻って来られた。
(2023/8記) |