平荘湖は山に囲まれていると言っても小山ばかりなので、それらを一日で一気に登ることも出来るが、幾つかの部分に分けて、それぞれを半日のミニハイキングで楽しむことも出来るのではと思っている。平荘湖の北東で小さな姿を見せる黒岩山を、午後のハイキングとして訪れたのは2012年1月の第2土曜日のことだった。この日は昼にかけて用事があり、13時を過ぎて漸く体が空いた。午後の残り時間は少なかったが、2時間程度で楽しめる山として、この黒岩山を思い付いたものである。平荘湖の北岸にある駐車場に着いたときは、14時になっていた。寒い季節とあって、駐車場は半分ほど空いていた。そこから黒岩山は指呼の距離。おおぞら保育園の背後に小さな姿を見せていた。登山口にはすぐに向かわず、平荘湖のほとりに立ってみると、水鳥以外にネズミを大きくした姿のヌートリアが、何匹も水際で休んでいた。それを暫く眺めてから登山口に向かった。登山口は平荘湖の北西端に近い位置にあり、関電鉄塔の巡視路だった。ごく普通の里山道の雰囲気で、すぐに37番鉄塔のそばに出た。その先は雰囲気は変わらないものの、次第に木立は灌木程度となり、展望が良くなってきた。背後を振り返ると、平荘湖が一望だった。黒岩山の山頂には登山口から15分で着く。登山口との標高差は100mほどなので、ほんの散歩だった。黒岩山の山頂は狭いながらも平らになっており、四等三角点(点名・天下原)が置かれていた。展望は南の方向にあり、平荘湖から瀬戸の海までが広く眺められた。ただこの日の空は雲の多い空で、視界は少し黄砂の影響でもあるのか、薄黄色みを帯びており、少しうっすらとした見え方だった。逆光と言うこともあり、南西方向ははっきりとは見えなかった。平荘湖も道中の方が良く見えていたようである。北の方向は木立が視界を遮っていたが、その中に小径があり、それを辿ると一気に展望が広がった。西には高御位山、北は志方城山、東は飯盛山と、加古川の山並みが一望だった。足下には幾つかのため池の並ぶ姿も見えている。山頂に戻ると、西へと尾根歩きを続けることにした。尾根の途中には小さなピークが二つあり、行者山、神吉山と名が付いている。すぐに急坂が始まり、そこは露岩地になっていたので、足下に注意が必要だった。雨の日はけっこう滑り易そうだったが、晴天続きとあって岩肌はよく乾燥しており、靴底はあまり滑る感じはしなかった。その急坂を下りきると緩い登り坂になり、そのピークが行者山だった。三体の大ぶりの石像が並んでいた。その行者山から先は緩い傾斜のままで、散策気分で歩いて行けた。途中からは小さな祠に入った石仏を点々と見るようになった。次のピークが神吉山で、芝地が広がっており、中央に日露戦争の記念碑が建っていた。もうふもとはごく近いこともあってか、誰でも気軽に来られるようで、けっこうゴミが目立った。そこからは幾つか小径があったが、一番広い道を下ると、東神吉町神吉の一角に着いた。近くを県道43号線が走っており、コーヒーレストラン那智が目印になるかと思えた。そこより駐車地点へは平荘湖に通じる車道を歩いても戻れるのだが、坂を走る車のそばを歩きたく無く、歩いてきた尾根を引き返すことにした。つまり黒岩山を二度登ることになる。この二度目に入った頃より空の雲は薄れ出して、青空の部分の方が多くなった。おかげで陽射しを受けることが多く、暖かい中を登って行けた。また午後も3時を回っており、斜光線となって風景に陰影が出来ており、黄色みがかった視界でも、いくぶん鮮やかさが現れていた。そのためか往路とは違った印象となった。平荘湖の登山口に戻ってくると、湖の南岸側に回り込んで、池の水位が下がったことで現れた中央の土手を歩いた。太陽は西の丘にかかろうとしており、暮色に包まれ出した湖を風景を眺めながら、駐車地点へと近づいた。
(2012/2記)(2022/2改訂) |