綾部山には説明は要らないと思うが、ひとめ2万本と称される綾部山梅林として有名で、登山とは無縁の観光の山である。ただその綾部山山頂には二等三角点があり、それを訪ねようとは考えていた。どうせ登るのなら観梅をかねて、梅の見頃に訪れたほうが綾部山に登った気分が出るのではと、2004年3月の初旬、七日の日に訪れた。この日は北からの低気圧の影響があるとの予報だったが、朝は快晴の空となっていた。10時前に着いてみると、もう駐車場は多くの車で埋まっていた。駐車場代が500円で、入園料が一人500円である。やはり観光ともなるとお金がかかるものである。ぞろぞろと人が園内に向かっていた。その人混みに混じって、そぞろ歩きで遊歩道を登って行った。紅梅、白梅が見事に咲き誇って、なるほど観梅の値打ち有りの風景であった。ゆっくりと歩いてもさほどの時間はかからず、園内の最高地点に着いた。地図を見ると三角点はその位置よりも少し南のようである。その方向は常緑樹が茂って薄暗くなっていた。遊歩道を離れてその雑木林に入ると、梅園の境界を示すように鉄条網が張られていた。ただきっちりとは張られておらず、破れ目もあったので、そこを通って南へと向かった。すると雑木林を抜けてまた遊歩道に出た。そのほんの先に山頂を示すかのように一段高く大きな岩があり、そのかたわらに三角点があった。そばには東屋もあり、公園のようになっていた。それも当然で、こちらは「世界の梅公園」の敷地内になっていた。入園料たしか別のはずなのだが、三角点を確認するだけなので許してもらうことにする。展望は山頂の大岩の上が素晴らしく、南には瀬戸の海が広がっている。そして東が広く開けており、足元に梅林の全景が眺められた。三角点の点名が「登り岩」とあるので、その岩を指しているのかもしれない。山頂の周囲を少し歩いたが、雑木が視界を遮り、展望は良いとは言えなかった。室津の辺りが眺められたのと、世界の梅公園の中心部が望まれた程度だった。その公園中心部の唐梅閣辺りは少しは賑わっていたが、公園の外れとなる三角点の付近には誰も見かけなかった。この頃になると、朝の快晴が嘘のように薄雲が空を覆ってきた。そして空の色が黒くなってきた。それを潮時に梅林へ戻ることにした。梅林にはいると、人出は更に増しており、ときどき立ち止まらなければならなかった。程なく小雪が降ってきた。風も出てきて、その雪を強く吹きつけてきた。入場券には甘酒券が付いており、休憩所のテントでその甘酒をいただきながら雪を避けることにした。雪はいっとき積もるかと思う勢いを見せ吹雪の様になることがあったが、程なくして止むと薄く青空も覗き出した。とつかの間、また雪が強い風とともに吹き付けてきた。どうやら晴れと雪の繰り返しが続きそうな雲行きである。好天の観梅が、荒天の観梅になってしまった。気温も下がって、観梅の雰囲気でもないので、人の流れに逆らうように、梅園入口へと戻って行った。
(2004/3記)(2010/3改訂)(2018/10写真改訂) |