梅林で有名な綾部山は、山頂に展望台があって海の風景が眺められるので、季節を問わず訪れることが出来るが、やはり一番は梅の花が満開となる三月初めから中旬が良さそうである。2010年の3月に入って綾部山は再び花の季節を迎えたが、特に行こうとまでは考えていなかった。それが6日の土曜日に昼食がてらの散歩として「みはらしの森」にある展望広場に出かけたところ、そこから見えた綾部山は中腹が梅の花ですっかり白くなっていた。そのまま綾部山まで歩いてみたい衝動に駆られたが、その日の午後は用事があって、遠望するにとどめた。但し一度行きたいと芽生えた気持ちを抑えられず、一週間後の13日に、綾部山へと向かった。ただ直接には向かわず、前週の再現とばかりに、まずは「みはらしの森」の展望広場に立ち寄って、綾部山を眺めることからスタートした。展望広場ではやはり昼食を食べながらの見物だったが、この一週間で山の白さは少し薄れているように思えた。盛りを越えたのかも知れなかった。車は「みはらしの森」ハイキングコースの西登山口そばに止めていたのだが、車はそのままにして、徒歩で綾部山に向かうことにした。歩いても20分ほどの距離であり、駐車料金500円の節約にもある。その綾部山梅林の入口は東麓の「羽子の池」のそばからで、昼を過ぎたばかりの時間帯とあって、訪れる人はピークなのか、前後に人の途切れは無かった。入園料は一人500円。これは飲料券付の値段で、パートナーとの二人分千円を払って入園する。売店部分を通り抜けて、緩やかに続く園内の遊歩道を歩き始めた。ここの梅は梅の実の収穫を目的としたもので、公称二万本が植えられている。ほとんどの花は白く小ぶりだったが、紅色のものも見られた。ここは一本一本の木を愛でるのでは無く、群落となって咲く様を眺めるのが良さそうで、そぞろ歩きで観梅を楽しみながら緩い坂を登って行った。梅林地区の最高地点は絶景地とされており、そちらへ続く坂に入って行く。相変わらず、前後に花見客が続いていた。絶景地は平らになっており、梅林風景を広く眺められる良い休憩場所だが、そこは梅林地区の最高地点と言うだけで、綾部山の山頂では無い。最高地点の背後が僅かに高くなっている訳だが、そちらは普通の雑木林になっていた。そしてその縁を鉄条網が張られており、西側の雑木林には入れないようになっていた。但し、山頂に向かうには雑木林を通り抜けなければならない。その鉄条網だが、梅林地区の最高地点を南端へと歩き、その続きの形で雑木林に入ると、何のことは無い、鉄条網は切れており、林の中に入って行けた。林と言っても小さな林で、すぐに抜け出して垢抜けした所に出た。そこは「世界の梅公園」の園内で、綾部山梅林地区とは一線を画しているのだが、どちらの施設にも立入禁止等の表示は無く、どちらも我関せずと言った風に思われた。その南端が一段高くなっており、東屋もあって展望台になっていた。その傍らに三角点が置かれていた。梅林側とは趣が異なり、こちらはのんびりとした雰囲気で、悪くは無かった。三角点のそばの岩場が一段高くなっており、登り岩展望台と名付けられていた。その上に立つと、展望台の名の通りに瀬戸の風景が一望だった。と言いたいところだが、この日はモヤの強い視界で、海の風景はほとんど何も見えていなかった。その海側だけでなく北東から東にかけても開けており、そちらはうっすらとながらも、雛山など近くの低山はまずまず見えていた。その周囲の展望よりも、ここからの一番の眺めは足下の梅林風景だった。梅林の所だけが白くこんもりとしている様は良い眺めだった。三角点を見たことで引き返すのが正解なのだが、「世界の梅公園」に入ってしまったことでもあり、園内を散策することにした。北へと遊歩道を歩いて行くと車道に出て、そこを越した所が唐梅閣や尋梅館の建つ公園中心部だった。その園内の様子は下の写真を見ていただくとして、こちらは名の通り世界の梅が見頃を迎えており、一本一本の美しさでは、梅林地区よりも勝っているのではと思われた。空もいつの間にか薄曇りから薄晴れまで回復しており、花の鮮やかさが増していた。また菜の花も見頃になっており、梅の花との対比は絵になる風景だった。すっかり観光気分になってしまい、尋梅館ではおみやげとして犬の置物まで買ってしまった。それにしても世界の梅公園と梅林地区は背中合わせだと言うのに、どちらも相手に対して無関心過ぎるようだった。両地区が連携してどちらもスムーズに行き来出来るようにすれば、相乗効果となっていっそう人の訪れが増えるのにと思えるのだが、いかがなものだろうか。その二つの梅林を鑑賞するという結果となったが、それも三角点を求めての余録と言えそうだった。再び綾部山梅林に戻ると、陽射しの出てきたことで、こちらも花の色が艶やかさを増していた。そして梅ジュースのサービスも受けて、後はゆっくりと麓へと下りて行った。もう上空はすっかり薄青空になっていた。
(2010/3記) |