愛宕山の名を付けた山は兵庫県だけでも各地にあるが、「淡河」の地図を広げると三木市志染町戸田の小さな丘にも愛宕山の名を見た。その北側は丘陵地だった。地図は平成3年と古かったため、念のためにネットで最新地図を見ると、一帯は見事に様変わりしており、愛宕山こそあったものの、その背後は「ひょうご情報公園都市」として工場が並んでいた。そこでネットの地図をコピーして出かけたのは2016年12月の第二土曜日のことだった。この日は播州北東部にある三つの愛宕山を登ろうと出かけたのだが、その一番目の山として向かったのがこの志染町の愛宕山だった。
山陽道を三木東ICで降りると県道38号線を東へと走って御坂東交差点の次の交差点、ひょうご情報公園都市への道に入ると、愛宕山のそばを通り抜けるだけで近づくことは出来なかった。そこで交差点に引き返して公園都市への道とは別の細い道に入り、そちらから愛宕山に近づいた。愛宕山の登山口が現れたが、その前を通り抜けて西へと走ると、溜め池の前に出た。そのそばに駐車スペースを見たので、そこに車を止めた。そこより歩き始めて登山口へと入った。石燈篭が現れるとその先は開けており、そこに小ぶりの祠が建っていた。ところがその先に小径は無く、ただヤブが広がっているだけだった。地図では破線の道が山頂まで続いていたので、無理やりヤブに突っ込んでみたところ、すぐに小径に出た。但し小径は笹が茂っており、ヤブに変わりなかった。どうやら誰も歩かず放置された結果、ヤブに戻ろうとしているようだった。そのヤブ道をヤブコギしながら進んだ。ときには小径を離れて雑木ヤブに入ったりしながら進むと、突然のように車道に出た。その先は広々とした工場敷地になっており、フェンスに囲まれていた。だだっ広い風景を見るだけで、そこに山の姿は無かった。ネットで最新の地図をコピーしており、そこに愛宕山を見ての上で来たのだが、現実は工場造成のために山頂は削り取られてしまったようだった。そして建っていたのはヤクルト本社三木工場だった。もう呆然とするしかなく、引き返すことにした。但しヤブ道を歩きたくなく、別のルートを探ることにしあ。車道を少し東に歩くと階段が現れた。階段は愛宕山の東縁に位置していたため下って行くと、途中で終わってしまった。後は愛宕山の斜面に入って下りを続けたところ、意外と雰囲気が良かった。足下は落ち葉が積もっており、頭上を見ると紅葉した木々が葉を散らしていた。すぐに麓に下り着くと、呆然とした気持ちを引きずりながら駐車地点へと戻って行った。
(2016/12記)(2020/5改訂) |