JR山陽線の曽根駅から宝殿駅にかけて、その北側には播磨アルプスと名付けられた岩肌が目に付く尾根が間近に迫っているが、その中にあって高御位山と鷹ノ巣山を結ぶ尾根は播磨アルプスの核心部と言えるだろう。その両山から派生する尾根は幾つかあり、その尾根との組み合わせで色々とコース設定が出来て、変化のあるハイキングを楽しむことが出来る地域である。この地徳山は鷹ノ巣山から南へと延びる尾根の次のピークで、鷹ノ巣山との鞍部には、東の鹿嶋神社からと西の別所高校からと二つの登山道が合流している。この地徳山に始めて登ったのは1993年のこと。このときは曽根駅からスタートすると豆崎奥山から登り始めて鷹ノ巣山、高御位山へと歩いたのだが、どうも関心が鷹ノ巣山、高御位山に向かっていたようで、単なる通過点のピークとしてしか印象に残っていなかった。そこでこの地徳山を今少しよく知ろうと再訪の機会を窺っていた。そのときは西麓の別所高校側から歩いてみるのもよいのではと思ったりもした。
二度目の訪問は2006年の建国記念日。前日までの澄んだ空はどこへ行ったのかと思いたくなるような、湿気をたっぷりと含んだ濁った空に変わっていた。少し早いが春霞かも知れなかった。冬の季節は出来るだけ雪になじみたいものだが、この空を見て諦めることにした。そこで思いついたのが、地徳山を別所高校側から登ろうというものだった。ただ地徳山を別所高校の脇からピストンで登るのでは、ごく簡単な散歩程度で終わってしまうので、今少しバリエーションを持たそうと地図を広げてみた。そして決めたのが、別所高校のそばにある別所横池の西端近くの尾根から登り始めるコースだった。その尾根は北東方向に高度を上げて、209mピーク経由で鷹ノ巣山の南西尾根に合流している。そこで鷹ノ巣山にも立ち寄って、その後、地徳山へと向かおうと考えた。そして山頂を踏んでから引き返して、別所高校そばに下りようとの行程だった。これでもごく軽いハイキングである。国道2号線を西から走って行くと、御着を過ぎて地徳山が大きく見えてきた。ごく低山だが、西からの姿は台形としてまとまった姿をしていた。2号線を離れて住宅地を適当に抜けて別所横池の西岸に出た。そこには小さな運動場があり、北宿公園と名付けられていた。その公園の駐車スペースに駐車した。その辺りからの登山コースは無いので、北へと歩いて山裾にある加茂神社に入り、神社の裏より斜面に取り付いた。辺りは薄暗いヤブになっており、すぐにイバラに引っかかり出した。また少し登るとシダがはびこりだした。ただそのすぐ上には岩肌が現れており、シダは無く灌木を見るだけだった。適当にシダの中を登って行くと程なく抜け出した。もう視界を遮る木々は無く、下草もほとんど見なかった。それも道理で一帯は山火事の跡だった。展望は一気に良くなり、足下には別所横池、そして東に地徳山が大きく見えていた。火事の跡とあって岩肌に脆い所があり、慎重に登って行く。小さなピークに出ると、209mピークへと続く尾根まではもう僅かな距離だった。その尾根に合流すると、尾根にははっきりとした尾根道が付いていた。その尾根道を歩いて鷹ノ巣山へと向かって行くのだが、もう全くのハイキングだった。冷たい北風も陽射しのおかげで寒さを感じないままに歩いて行けた。その尾根も山火事跡だった。木々はみすぼらしいものの、展望だけは抜群だった。右手となる南の方向はモヤのひどい視界ながら、日笠山から始まって一本松へと続く尾根がうっすら見えていた。そして北には桶居山があり、そちらは播磨アルプスの風景だった。尾根の暖かい陽射しも、歩いているうちに雲に閉ざされることがあり途端に肌寒くなった。この尾根のポイントとなる209mピークで一休みとした。尾根の先を見ると、鷹ノ巣山の南尾根との合流地点まで尾根道の続いているのが見えた。鷹ノ巣山の尾根はやはり人気コースなだけに、ちらほらと人の姿が見えていた。その合流地点に着くと、もう鷹ノ巣は近かった。その頃より北の空から黒雲が流れて来た。風は一段と冷たくなり、気温も15℃近くあったのが、一気に10℃まで下がって来た。その中を鷹ノ巣山へと向かった。すれ違う人も多くなり、合流点から12分で鷹ノ巣山到着となった。着いたときもまだ陽は雲の中とあって、薄ら寒い雰囲気だった。見える風景もただ濁ったようにしか見えず、小休止を終えると引き返した。そして地徳山へと下って行く。ここで百間岩を歩くのだが、下りとして通過するため、一生懸命踏ん張って登る楽しさは味わえないのが残念だった。鞍部に着いて漸く地徳山登山となった。途端に人気が無くなった。地徳山への登りはやや急坂で始まった。その頃より再び陽射しが戻ってきており、少し汗をかきながらの登りとなった。登山道は雑木に囲まれていたが、低木が多いため振り返ると鷹ノ巣山から高御位山へと続く尾根が姿良く見えていた。やや急坂と言っても、10分も登れば頂上部に出てしまい、息切れするほどでは無かった。やはり地徳山だけを登ることは少々呆気なさ過ぎるようである。その山頂は西から台形に見えたように、南北に長くなっており、その南端が開けて展望地になっていた。東から北東にかけての展望が良く、高御位山が姿良く全姿を見せていた。地徳山はちょっとした高御位山の展望台と言えそうだった。翻って西を見ると、少し木々に邪魔されるものの、足下に別所高校が見えていた。暫くするとまた黒雲に陽射しが消されるようになった。上空にも黒雲が広がろうとしており、当分陽射しは望めそうもなかった。地徳山での展望を楽しんだことでもあり、これをしおに下山とした。引き返して鷹ノ巣山との鞍部まで戻ると、そこからは別所高校前へと続く小径を下って行った。この小径が何とも緩やかなもので、これは散歩道かと思えるほどの気楽な道だった。これならこの道で尾根を越えて鹿島さん参りをした人も、足の負担になっていなかったのではと思いながら駐車地点へと戻って行った。
(2006/3記)(2011/2改訂)(2022/9写真改訂) |