低山を楽しむのは冬の季節が最適だが、播州にはその低山が沢山あって選ぶのに迷うほどである。市川町にも低山は多くあり、その中で興味を持ったのがこの七種槍の南東に位置する古城山から横倉山へと続く尾根だった。尾根は七種槍とはつながらず北へと延びて大中山に通じているが、そのことよりも古城山の山頂には谷城跡があり、麓よりハイキングコースが整備されていることを知ってのことだった。向かったのは2008年2月の最初の週末。ごく低山のためすぐにこの山には登らず、先に近くにある妙見山を登って足慣らしをした。妙見山もごく小さな山で、1時間ほどのミニハイキングだった。そして移動して古城山の麓にある大歳神社の駐車場に着いたのは11時20分だった。その大歳神社に着いて分かったのは、谷城跡へのハイキングコースが更に整備されて「谷しろやまの杜」として横倉山の手前の峠地蔵まで遊歩道の続いていることだった。これで古城山から先も気楽なハイキングを楽しめることになった。心配なのは空模様で、朝からどんよりとした空は更に黒くなっていた。午後遅くから雨が降り出すとの天気予報を頼みにハイキングを開始した。
大歳神社の境内に入ると、本殿への石段の隣にゲートがあり、その先に遊歩道と思える小径が見えた。それがハイキングコースの始まりのようで、それを歩いて行くことにした。ゲートを抜けると遊歩道は舗装路で始まっており、あまりハイキングの雰囲気では無かった。少し登ると城跡の一つなのか平らになった場所に出て、舗装路はそこまでだった。そこには二つのお社があり、石の鳥居が二つならんでいるのが珍しかった。そこを過ぎると冬枯れの木立の中を登るようになった。足下も落ち葉が小径を覆い、漸くハイキングコースの雰囲気となった。周囲の木立は手入れが行き届いてすっきりとしており、これで陽射しがあれば申し分無しなのだが、すっかり曇り空なのが残念だった。コースには的確に標識が立っており、所々に森に対する知識となる案内板も立っていた。そのハイキング道を登って最初に着いたピークが古城山だった。そこは二段になって開けていた。高い位置は周囲を杉木立に囲まれているものの城跡らしく広く平らになっており、ベンチも置かれて程良い休憩場所になっていた。ちょうど昼どきでもあり、昼休憩とする。そこには城跡の説明板があり、今の位置が主郭であると説明されていた。その上段の位置こそ木立で展望は無かったが、下段は木立は無く東から南へと広く開けていた。そして市川町の街並みが眺められた。一休みを終えてハイキングの続きをする。ただ遊歩道のままに歩くだけであり、しかも山上に出ているのできつい坂も無く気楽なものだった。遊歩道は尾根上を続くものと思っていたが、最初こそ尾根コースだったものの途中から尾根コースと巻き道コースとに分かれた。ここは巻き道コースで進んで行くと、途中で尾根コースと合流することになった。その近くに展望台があったので上がってみた。さほど広い展望ではなかったが、北の方向となる市川流域の風景が広がっていた。そこを過ぎると遊歩道はずっと巻き道コースで続くことになった。コースはまだ新しいためか所々に切られた木が積まれていたが、雰囲気としては悪くなかった。またアップダウンも少ないためごく気楽に歩いて行けた。周囲は雑木林が取り巻いて展望は良くなかったが、ときおりその木立がばらけたときに鋭い山が西に望まれた。七種槍のようだった。その雰囲気のままに峠地蔵へと近づいて行くと、横倉山の名が付く観音堂への道が分かれた。まずは観音堂を訪ねることにした。ごく普通のお堂が建っているだけだったが、回りにたくさん小仏の置かれているのが珍しかった。そして再び遊歩道に戻り、今少し歩いたところが遊歩道の終点となる峠地蔵の位置だった。名の通り小さな地蔵さんが置かれていた。遊歩道は終わっても北の方向に山道は続いており、鶴居駅へ行けるようだった。また尾根の先にある横倉山への方向も、木立はまばらで無理なく登って行けそうだった。その横倉山へ向かおうとしたとき、峠地蔵の近くに送電塔の建っているのが見えた。ちょっと展望を期待してその送電塔にも立ち寄ってみることにした。尾根を横倉山の方向とは反対に登ることになり、そちらは尾根道があって20メートルほどの標高差を登って送電塔の前に出た。そして狙い通りに七種槍がすっきりと眺められた。その七種槍を眺めながら、横倉山山頂の西の位置が木立の少ないことに気が付いた。そこなら更に展望が良さそうに思えた。そこで峠地蔵に戻って、新たな気持ちで横倉山への登りにかかった。横倉山へは尾根道こそ無かったが、雑木の疎らな尾根は登り易く、10分も登れば四等三角点の前に出た。その三角点の位置は雑木が繁っており、木立の空いた所から古城山の姿が眺められると程度だったので、すぐに西側へと移動した。遠くから木立の少なく見えた辺りは伐採地になっており、その後に植えられた植林もまだ若木だった。おかげで西に向かって広々と展望が広がっていた。そして七種槍がいっそうの迫力を持って見上げるようにして眺められた。まさにここは七種槍の絶好の展望台だった。この展望に満足して、「谷しろやまの杜」ハイキングを終えることにした。峠地蔵へと引き返し、そして再び遊歩道歩きで戻って行った。もう空はすっかり黒くなっており、いつ雨が降り出してもおかしくなかった。それでも古城山手前のピークに立ち寄って、そこにあるアスレチック遊技で遊んだりと、別に急ぐことも無くハイキングを楽しんでの帰路だった。麓の大歳神社に戻って来たのは14時。帰り支度を終えて車を走らせ出すと、程なく雨粒が落ちて来た。
(2008/2記)(2020/7改訂) |