姫路市街を離れて夢前川沿いの県道を北上して行くと、左手に書写山が見え出すと、程なく右手に赤い屋根の大きな工場が見えて来る。それはヤマサ蒲鉾の工場で、その一角にはかまぼこ工房・夢鮮館も出来て、ちょっとした名所になっている。そのヤマサ蒲鉾の北に低い尾根が見えるが、その尾根の西端のピークが南山である。その南山の尾根を東へと辿って行くと、尾根は次第に高度を上げて、氷室山につながっている。この南山を2007年4月の第3土曜日に訪れた。ごく低山のためすぐには向かわず、その日の午前は夢前町の別の山に登り、午後に入って南山に向かったものである。夢前町の山々はすっかり新緑に包まれていたが、この南山も新緑で淡い色合いになって、春真っ最中の姿だった。さてどこから登ろうかと地図をにらみつけると、ヤマサの工場の近くから南山の尾根に向かう破線路が目に付いた。その道の先は三角点ピークから離れるが、そのルートでまず尾根に出て、尾根歩きでピークに近づくのも悪くないと思えて、その道をアプローチに使うことにした。ヤマサの工場に北から近づくと、山に向かう未舗装の道が見えた。それが地図の破線路のようで、その道に入るとすぐに墓地のそばに出た。そこに駐車スペースがあったため、そこに車を止める。歩き始めると破線路は林道の雰囲気で山中へと入り、ほぼ平坦なまま谷あいを北東へと続いていた。道そばの少し開けた所は畑地になっており、山里の様相だった。道は次第に細り、斜面を登るようになると人しか歩けない小径に変わった。その小径も程なく消えたため、尾根に向かって木立の空いた所を適当に登って行った。下草が少ないのは助かり、灌木を避けながら登って行くと、ときにシダヤブが現れ、そこは迂回した。そして尾根に出たのだが、現在地がどこなのかよくつかめない。三角点ピークの東にいることは分かっていたため、西へと尾根を歩き始めることにした。尾根に出るまでも展望は無かったが、尾根も雑木に覆われて視界は開かなかった。ただ尾根道こそ無かったものの、ヤブ尾根でも無かったので、まずまず歩いて行けた。最初に着いたピークはすっかりシダに覆われており、そこが三角点ピークかと思って少し一帯を探ると、尾根はまだ緩やかに西に向かっていたため、そこが三角点ピークより300mほど離れた210mほどのピークだと当たりをつけた。シダヤブと少々格闘してしまったため、そのピークで一休みとした。ついでに展望を求めて辺りを探ると、北の方向で木立の空いた所があり、そこからは城段の尾根が眺められた。その小ピークを離れて西へと尾根を歩き出すと、はっきりとした尾根道が現れ、けっこう歩き易い尾根となった。ときおり木立の空いた所もあって、置塩山から城段が次第に大きく見えて来た。そして小休止したピークから30分ほどで三角点のある南山山頂に着いた。尾根歩きの間はおおむね展望は悪かったのだが、三角点のそばでは南が開けており、夢前川を挟んで書写山が、左手には氷室山が迫っていた。そして足下にはヤマサの工場が大きく見えており、今立つ位置がどこなのかが良く分かった。この後は下山に向かい、尾根道なりに歩いて行くと、方向は北に向かった。すると始めは歩き易かったのだが、次第にシダが増えて来た。そのシダを避けながら歩き易い所を探っていたのだが、途中から周囲は総てシダヤブになってしまい、強行突破をせざるを得なくなった。しかも急坂になって時にずりおちたりと、かなり厳しい状況となった。そのシダヤブ帯を突っ切ると再び疎らな雑木林となり、道こそはっきりしなかったが、楽に下れるようになった。その様子のまま下って行くと、麓が近くなって墓地に辿り着いた。そして暮坂峠に通じる県道に下り着いた。時計を見ると山頂から30分とかかっていなかったが、シダヤブと格闘したためか、1時間はかかった思いで、とうてい200m少々の山とは思えぬ道のりに感じられた。後は車道を歩いて駐車地点へと戻ったが、登山道の無い低山では思わぬ苦労をさせられると、改めて感じさせられた。
(2007/5記)(2012/12改訂)(2020/8改訂2) |