たつの市の中心部、旧龍野市の市街地から目立つ山と言えば鶏籠山に的場山の尾根となるが、この金輪山も市街地にごく近いとあって目立つ度合いでは負けていない。また山頂には電波塔が幾つか建っており、山容以上にかっこうの目印になっている。この金輪山も登山となると車道が山頂まで通じているとあって、ただ舗装路を登って行くだけの味気なさがあり、ちょっと物足りないと言えそうだ。その金輪山を7年ぶりに訪れた。その7年前は車で山頂に上がっているため、歩いてとなると13年ぶりとなる。2009年3月の春分の日で、この日は三連休の初日だった。好天ならば遠出したいところだったが、北の空はどうやら翌日の方が良さそうだった。そこで足を使うのは翌日のこととして、この日は散歩程度で登れる山で昼食どきを過ごすことにした。そしてご無沙汰している山は無いかと考えたとき、この金輪山を思い出したものである。登り味は二の次として、山頂展望を楽しもうと考えた。この金輪山には北からの尾根コースもありそうだったが、ごく簡単に登ろうと、前回同様に車道の通じる南麓からのコースで登ることにした。
たつの市の市街地が近づくと、その空は半分以上を雲が占め、金輪山には陽射しが当たっていなかった。南麓の龍野町片山には住宅地が広がっているが、その中の道を進んで行くと、山頂への車道が始まる位置に着いた。そこには登山口の標識が立っている。その先に進入防止のガードがあって一般車は進入出来ないようになっていた。
前回来たときは車で山頂に上がっていたので、ここ7年の間に作られたようだった。こちらは最初から入口に止めるつもりであったので、その近くにあった車1台分程度の路肩スペースに車を止めた。そして車道を散歩感覚で歩き始めた。戻り寒波があって、このたつの市でも空気は少しひんやりとしていた。ただ春の目覚めはあり、ツツジがちらほら咲いていた。この車道には後から植えられたのか、クスノキが点々と続いているのが目に付いた。中程まで歩くと山頂の電波塔群が眺められるようになり、山頂が近づいたとき、ハングライダー乗り場も現れた。そして登山口から30分とかからず山頂に立つNHKテレビ竜野中継放送所に着いた。ここに三角点があると思っていたのだが、なぜか見当たらない。北面を見ると、一帯の木が切られて公園風に整備されようとしており、どうやら新しくハイキングコースも作られているようだった。その関係で見つからないのかと勝手な解釈をして、三角点探しは諦めた。この金輪山は山頂の南側が平らに開けており、千畳敷と呼ばれている。そこが展望台になっており、ベンチも置かれていた。桜の木が植わっており、あと十日もすれば賑わうのではと思われた。展望台だけに展望は良く、たつの市の中心部が広く眺められた。遠くには御津山脈も見えている。相変わらず雲の多い空で、その雲が陽を隠しているときは少しばかり肌寒さを覚えた。そして陽が現れるとさっと暖かくなった。ここでベンチに座って、南の風景を眺めながらパートナーと共にのんびりと昼どきを過ごした。この金輪山にはここでの昼食だけを考えて登ったのだが、新しく作られているハイキングコースに興味が湧いて、ちょっと覗いてみることにした。最高点まで戻り、その横から始まる地肌がむき出しの小径へと入った。行く手に小さなピークが見えてきた。210mピークで、そこまで歩いてみることにした。まだ切られたばかりの灌木が道そばに置かれている。その木が切られたことによって展望は悪くなく、前方には鶴嘴山の尾根を、その奥には黒尾山も眺められた。また左手には新龍アルプス、右手には書写山も見えて、良い感じのハイキングコースになりそうだった。その頃には空の雲は少し少なくなっており、陽射しの現れているときが長くなっていた。明るく照らされた小径を歩きながら210mピークに着くと、そこはまだまだ整備中だった。真新しい小径はその手前で北西方向へと下りており、尾根には以前からの小径が続いていた。そのまま先へ進めば神岡町大住寺へと下りられそうだったが、この日はこの小ピークまでとする。この小ピークにいるときは少し陽射しが遮られていたことと北からの風をまともに受けていたこともあり、その寒さに気温を見ると15℃まで下がっていた。今少し日にちが経ってハイキングコースが出来上がった暁には、北尾根コースを歩いて金輪山も良さそうだと思いながら、小ピークを離れた。そして再び山頂に着き、車道を駐車地点へとまた明るくなってきた空の下を戻って行った。
(2009/4記)(2020/7改訂) |