たつの市街の北東に佇む金輪山に、「椰獅子の丘」ハイキングコースが出来たのは2009年のこと。これで金輪山ハイキングがバラエティになったと思ったものの、なかなか足を向けず、漸く向かったのは2011年9月の第一日曜日、4日の午後のことだった。前日の3日は台風12号が近づくとあって、終日強風と雨だった。台風は時速10kmと動きが遅く、夜になって漸く岡山県を通過した。日曜日となった4日も台風の影響は残っており、朝の空は曇り空で、まだまだ風が強かった。またときおり雨も降った。昼頃になってようやく陽射しが現れたので、午後に少し体を動かそうと考えた。そこで思い浮かんだのが、「椰獅子の丘」ハイキングコースだった。ただ午後に入ってもすぐには向かえず、用事を済ませるうちに15時を回ってしまった。それでも向かったところ、金輪山の北東にある神岡町沢田集落に着く頃には16時が目前になっていた。その沢田集落を抜けると、椰八幡神社の前に出た。小さな集落にあるにしては大ぶりの神社で、その前を西へと進むと、「椰獅子の丘」の案内板が現れて、その手前に数台の車が止められる駐車スペースを見た。そこに車を止めて案内板を見ると、山頂へのコースは三つあるようだった。夕方が近いことを考えて、一番早く山頂に立てそうな中ほどの尾根に付くコースを登ることにした。始めに農道となった車道を南へと進んで行くと、害獣避けゲートが右手に現れた。そこは大池のそばで、ゲートを通ると大池が足下に眺められた。そこから二つのハイキングコースが始まっており、右手に向かえば沢すじコースで、左手が中尾根コースだった。左手の道を進む。すぐには登り坂にならず、植林地の山裾を南の方向に歩いて行く。その先は竹林になり、左からの小径と合流すると道の向きは西に変わって、ようやく登り坂になった。緩やかな遊歩道の道で、出来てからまだ2年ほどのため、落ち着いた感じはまだ出ていなかったが、ごく気楽に歩いて行けた。ただ空気はたっぷりと湿っており、すぐに汗となってきた。緩やかな尾根を登るようになり、その尾根の傾斜が増しても道はつづら折れとなったので、相変わらず楽な登りだった。周囲は雑木林が広がっている。小さなピークに着くと、そこにはベンチがあり、北西方向に展望が開けていた。予想外だったのは空模様で、金輪山に近づく頃には薄日も見られた空だったのに、再びどんよりとした曇り空に変わっていた。宍粟の方向は全くの雨雲で、晴れの気配は無かった。緩く下って緩く登ると主尾根に出て、北から続く展望尾根コースに合流した。相変わらず易しい遊歩道の道が続く。尾根からは揖保川の流れが見えるようになったが、台風の大雨で水量は大きく増しており、しかも茶色く濁っていた。普段とは全く異なる姿だった。山頂から一つ手前の210mピークに着くと、山頂が眺められるようになった。もうそこからは知った道で、緩やかな尾根道は山頂まで続き、電波塔の建つ山頂には歩き始めてから40分での到着だった。ごく軽いハイキングと言える。すっかり暗い空になっており、山頂に着くのを待っていたかのように霧雨が降り出した。山頂ではあまり動かずNHKのテレビ塔のそばで休んでいたが、その休む間に西向かいの新龍アルプスが雨雲に閉ざされてきた。また霧雨は小雨へと変わって、天気はどんどん悪くなるようだった。この天気のためすっかり薄暗くなっており、下山は早く下れるコースをとることにした。当初は展望尾根コースを歩こうと考えていたのだが、最短コースは登ってきたコースと思え、往路と同じ中尾根コースを下ることにした。緩やかな道とあってどんどん下れて、30分ほどで駐車地点に戻ってきた。もうはっきりとした雨に変わっており、トンガリ山の尾根がうすぼんやりと見えていた。次回は天気の良い日に、他のコースを歩きたいと思いながら「椰獅子の丘」を後にした。
(2011/10記)(2018/12写真改訂) |