たつの市と姫路市の境に位置する向山は、北西麓の林谷地区からと北東麓の舞子池からと二つのコースがあるが、2017年の晩秋は林谷地区側から登って紅葉を楽しんだので、翌2018年4月は舞子池側から登って新緑を楽しむことにした。新緑と言っても萌葱色の新緑だった。向かったのは4月7日の土曜日のこと。この日の天気予報は午前は曇りで午後から晴れとなっていたが、午前からはや青空が見られるまでになっていた。そこで安心して向山へと向かった。舞子池のそばに着いたのは11時。舞子池の辺りは大規模に太陽光パネルが設置されており、様相が変わっていた。その上空は曇り空だったが、いずれ晴れに変わるだろうと気にせず登山道に入った。向山はごく低山だけに急坂は無く、歩き易い登山道が南へと続いていた。10分と歩かず木々の隙間から山頂が見えてきた。そのときぽつりぽつりと雨が降ってきた。天気予報と違うと思っていると、はっきりとした雨となった。しかも風を伴ってだった。あわてて大きな木の下に逃げ込んで雨宿りとした。その雨は15分ほど続いたろうか、漸く雨が止んで来たのを見て尾根歩きを再開した。尾根ではコバノミツバツツジがあちらこちらで赤紫色の花を咲かせていた。歩くうちに青空が見られるようになり陽が射してきた。この向山は落葉樹が多いようで、その木々が今まさに新緑を萌え出させようとしており、山肌はすっかり萌葱色になっていた。緩やかな尾根を西へと歩くようになり小さなピークを越して山頂へ。山頂に着く頃にはほぼ晴れと言える空に回復していた。山頂に着くもそこでは休憩せず、今少し歩いて岩場のテラスが広がる西隣の210mピークで休憩とした。岩場のテラスは柔らかい陽射しを受けて暖かく、休憩には最適だった。間近に見える向山の山頂はすっぽりと淡い新緑に包まれて見事な美しさだった。空気は爽やかそのもので、その空気感も味わいながら昼休憩を楽しんだ。ただ新緑は素晴らしいものの、この日の視界はうっすらとしており、遠くに見える御津山脈は薄ぼんやりとしていた。そのテラスで休むうちに空に雲が増えてきて、しかも黒い雲も見られるようになった。それをしおに下山とした。下山はすんなりと往路を戻った。山頂で少し足を止めただけで、後は休まず下った。空は北からどんどん雲が流れてきて、登山口に戻ってきたときはすっかり曇り空に変わっていた。
この向山は手頃な登山道がある上に岩場のテラスが数カ所あって展望も楽しめ、更に春に新緑、秋に紅葉も楽しめてハイキングの満足度は高いのではと思えるが、訪れる人は少ないようだった。ガイドブックに紹介されれば人気の山になるのにと思えたが、今のまま静かな山であってもらいたいとも思った。
(2018/5記) |