太子町の東に位置する城山は一等三角点を持つ山。その城山を地図で眺めたとき、北山と名の付く小さなピークが寄り添うように南東に立っている。城山を久々に登ろうと考えたとき、先に北山を登り、尾根続きで城山を登るのが面白そうに思えた。その考えを持ったのは2009年1月後半の土曜日だった。北の空が思わしくないため、近場のハイキングとして思いついたのだが、いざ行動に移そうとしたとき、その二つの山でも簡単過ぎそうで、物足りなさが残るのではと思われた。その城山、北山は自宅からは遠い距離では無いものの、間に京見山が立ちはだかっている。その京見山もごく簡単に登れる山なので、それならば自宅から京見山を越して北山、城山に向かうのも悪い考えではないと、イメージが膨らんだとき、すぐに実行に移すことにした。自宅を出たのは11時と昼に近い時間になっていたが、北山で昼食が出来るのではとけっこう気楽な気持ちでスタートした。空はきれいに洗われたように晴れていたが、風がとにかく強く冷たかった。気温は3℃と冷えている。京見山へはいつもの京見西登山口からで、軽くひと登りと言った感じで登り、20分での山頂到着だった。その山頂から北を見ると、城山は間近ですっきり見えているものの、遠くの空は荒天のようで、宍粟の山は雲に隠されていた。京見山からは原コースで北へと下って行く。このコースはあまり歩かれていないようで、枯れ葉が積もっていた。ただ歩き難いことは無く、ごく普通の里山道を歩く感じで下って行けた。途中は送電塔の巡視路にもなっているのか、プラ階段も見られた。少し急坂の所もあったが、こちらも20分ほどで麓の原集落に下り着いた。そこから北山の南西麓に広がる「きたやま公園」を目指して暫くは車道を歩くことになるが、出来るだけ幹線道路を歩かないように、農道を伝いながら北へと歩いた。寒風の中にくっきりと北山、城山が見えていた。新幹線の高架をくぐり、国道179号線をひょいと渡ると、そこは「きたやま公園」の入口で、ここまで自宅から京見山越えで1時間だった。「きたやま公園」墓園公園で、その中を貫く舗装路に沿って歩道が続いていた。それを登って行くと、右手は墓地の風景で、左手にはため池が眺められた。そして登るほどに平野の風景が広がってきた。その墓園公園の一番高い所まで歩き、更にのり面を登って公園を見下ろす位置でようやく腰を下ろした。ちょっとした展望場所で、左手には先ほど立っていた京見山が見えており、その右は播州平野が広がる。遠くは御津山脈まで見えている。兵庫北部の天気は悪くとも、こうして晴れた南部を眺めていると、瀬戸内の気候の有り難さがよく分かった。昼食を済ませてお腹が膨らんだところで北山へと登りを開始した。その休んでいた位置は山頂から南に延びる尾根の間近であり、すぐに尾根を辿って行く。少しヤブになっているのではと気にかけていたが、はっきりとした小径こそ無いものの木立は空いており、ごくスムーズに登って行けた。害獣除けネットが尾根に沿って付けられていたが、所々で倒れていたり切れていたりしており、あまり役立っていなかった。その歩き易いままに登ると、12分で北山の山頂だった。何とも小さな山である。そこには三角点があるわけでも無く、雑木が取り囲んでちょっと雑然としていた。木立の空いた所には共同アンテナが立っていた。その位置から東を見ると近い所に端正な山が覗いていた。良く見ようと少し東に下ると、それは西蒲田山だった。その遠くには笠形山も見えていた。そして足下には大幹線の姫路バイパスが走っている。北山山頂は単にヤブの雰囲気かと思っていると、東西に長い山頂を城山へと歩き出したとき、そのなだらかな尾根にけっこう幅広で道が付いていた。展望こそ無かったが、雰囲気は悪くなかった。その道なりに北西へと下ると、工事中の林道に出た。それを横切ると、ちょっとオブジェ風の面白い杉林があり、そこを抜けたところで城山の林道に出た。これで北山の領域は終わったが、ちょっと面白さがあって北山のイメージは悪く無かった。次は城山だが、その城山には南西尾根を登るつもりで林道を進んで行った。すぐに林道はその尾根に接するようになり、適当な位置で尾根に上がった。尾根に上がると行っても数メートル登るだけだったが。尾根は純然たる雑木林で、はっきりとした小径こそ見えなかったが、尾根を辿る気持ちで登れば、ごく普通に登って行けた。点々と赤テープも付いている。途中には古墳もあって、けっしてヤブの雰囲気では無かった。まずまず人に歩かれているようだった。ときどき大岩が現れたが、城跡と関係があるのかも知れなかった。山頂が近づくとシダの茂る所や灌木ヤブも現れたが、そこは迂回出来るので、相変わらず無理の無い登りだった。尾根に急傾斜は無いまま、尾根に取り付いてから20分ほどで山頂到着だった。7年ぶりの山頂は雰囲気としてあまり変わっていないようだったが、少しは興味が持たれてきたのか、前回には見なかった山名標識が付いていた。やはり山頂の展望は良いとは言えず、木立に少し妨げられながら白毛山から京見山の尾根が眺められた。その山頂は意外と北風を受けず、パートナーは日溜まりでじっとして陽射しを楽しんでいる。こちらは北の展望も得たく、少し北に移動した。そちらはすっかり雑木が視界を妨げていたが、その隙間から白い山が覗いていた。少し辺りをうろつくと少しは眺められる所があり、白い山は後山から駒ノ尾山の尾根だと分かった。更に黒尾山までが見えていた。その風景を見ながら、山頂が今少し整備されれば、北の展望の良い山になるのではと思われた。城山山頂は風の少ないこともあって30分ばかりを過ごした。そして下山を始める。下山は登って来た尾根を辿るつもりで下っていると、やはりヤブ山の一面があり、シダを避けるうちに右寄りを歩いてしまった。その結果、前方の展望が開けて、すっきりと太子町一帯から瀬戸内までが眺められた。それを見てコースを外れていることに気付き、軌道修正してもとの尾根に戻った。戻ると言っても数分の距離だったが。林道に出ると、後は麓まで林道を下って行く。その途中で「楯岩城登山口」を見たが、その城の名が城山の山頂に建っていた城のようで、その登山口が尾根コースの起点かも知れない。この後は再び京見山越えで戻るのだが、京見山を勝山町コースで登ろうと、西寄りで戻ることにした。それは福井大池の散策路を歩くもので、そこには遊歩道が整備されており茶枯れた野原と池の風景は悪く無かった。ごく近所の散歩道なのだが、池に架かる歩行デッキの上に立つと池を前景に城山が見えており、その優しげな風景は心休まるものだった。ちょっとした思いつきから5時間ほどのハイキングとなったが、十分に楽しめた思いで京見山へと近づいた。
(2009/2記)(2015/10改訂) |