兵庫県内にも駅を下りてすぐに登れる山はいくつかあるが、ターミナル駅からとなると少なく、新神戸駅からの摩耶山がまず思い浮かぶが、これはちょっと登山時間が長そうである。その点、播州赤穂駅の駅裏にある雄鷹台山はごく小さな山なので、30分とかからず山頂に立つことが出来る。そして足を延ばせば後山へ、そして高山へと尾根歩きを楽しめる。そこで本格的なハイキングで無く午前か午後だけのちょっとした山歩きを楽しみたいときには駅そばだけにごく気楽な気持ちで向かうことが出来る。2008年3月最初の土曜日は赤穂市内で午前を所用で過ごした。そして昼を過ぎて体が空いたが、そのまま帰るのはもったいなく思い、午後のひとときをハイキングで楽しむことにした。赤穂市内で簡単なハイキングを楽しめる所となると坂越港周辺や黒鉄山などいくつかあるが、市街地の近くとなるとこの雄鷹台山が一番となるので、あっさりとここに決めた。ただ雄鷹台山だけでは散歩程度となるので、隣のピークとなる後山まで歩くことにした。
雄鷹台山を遠くから眺めると、山頂から真っ直ぐな尾根が南の方向、播州赤穂駅に向かってひたすらなだらかに延びている。その尾根端が登山口で、そのそばに車を止めてスタートした。まず大師堂への長い石段登りがあり、石段を登り切ると太子堂のそばから遊歩道が始まっていた。この日の午前は快晴だったが、昼を回って北から黒雲が流れて来るようになっており、空の半分は雲に占められていた。陽射しが雲に隠されると肌寒さを覚えたが、雲が通り過ぎて陽射しが現れると一気に春の暖かさを感じた。程なく右手に雄鷹台山の山頂が見えて来ると、その先で展望地に出た。そこは広く露岩地になっており、足下には赤穂の市街地が広がっていた。その市街地から瀬戸へと広がる風景を眺めながら遅い昼食とした。お腹がふくれたところでハイキングを続ける。遊歩道には点々と石仏が置かれており、また丁石代わりの標識が立っていた。標識には丁寧に次の何丁目までの距離も記されていた。遊歩道は昔ながらの里山の道で、変に手入れがされていないだけに落ち着きのある良い小径だった。ゴミ一つ落ちていないのも気持ちが良かった。空は相変わらず黒雲に陽射しの遮られることが多く、陽射しの無いまま雄鷹台山の山頂へと近づいた。そして休憩地点から20分ほどで山頂に着いた。山頂にはモニュメントがあり、鉄棒があって東屋のある風景は以前と変わっていない。そこから先は遊歩道と言うよりも防火帯として作られた道を歩くことになる。そこを初めて歩いた1995年では削られたばかりの地表が白っぽい色で現れており、それを取り巻く常緑樹の風景にどこか異国に来たような錯覚を覚えたものだが、10年以上経ってその風景にも落ち着きが出てきたようだった。小さなアップダウンを越えて後山へと近づくと、その山肌の木々が山火事で焼けているのが見えた。1年ほど前にあった放火による山火事によるものだった。雄鷹台山のピークを離れてから20分ほどで後山の三角点(点名・砂子)に着いた。そのとき上空は黒雲が広がっていたため、その雲が通り過ぎるのを待つことにした。やはりこの防火帯の風景は明るい陽射しの中でこそ眺めたいと思ったもので、20分ほど待って漸く大きな雲が通り過ぎた。明るくなった防火帯の道とそれを縁どる灌木林の輝く風景を目に納めると、下山すべく腰を上げた。時間があれば高山まで歩いてみたかったが、この日は午後のみのハイキングのため、この後山までのピストンとして、往路をそのまま引き返すことにした。それにしても歩いている時間なら後山まで片道1時間とかからないごく気軽なハイキングなのだが、午後の陽射しの中をこの山で過ごす人は少ないようで、昼食の休憩時に一人の下山者を見た以外は、終始パートナーと二人っきりだった。市街地の間近にあり、そして低山ハイクには適度な天気だったのに、どうも赤穂の人はこの山をお年寄りが朝晩の散歩で登る山とでも思っているのではと疑ってしまった。
(2008/3記) |