石粉山は赤穂の山を紹介した「花と緑の散歩道」で知った山だが、地図をじっくり見ないと位置がつかめない山だった。兵庫県赤穂市の横山と岡山県備前市の五石とを結ぶ峠道を歩いて、県境尾根を峠の位置から南へ僅かに登った位置にあるピークだが、本では標高256mとされているものの、地図では標高は無く250mの等高線を見るだけだった。その石粉山が展望の良い山として紹介されていたので、それに興味を持って向かったのは、2010年最後の日、31日の大晦日だった。前日は荒天で、姫路市内は雨だったのだが、赤穂市の北部は雪だったようで、横山集落の道は白くなっていた。更に長谷池へと近づくと、路面は2、3センチの積雪になっていた。長谷池のそばに駐車とした。この日の天気は曇りの予想だったが、見上げる空は良く晴れていた。但し青空はうっすらしていたが。良く晴れているとあって朝の冷え込みはきつく、気温は1℃だった。車道は池の北岸をダートの道でまだ続いており、その白くなった路面を歩いて行った。水たまりは凍っており、氷を割ると、その厚みは1センチほどあった。ダートの車道は10分と歩かぬうちに荒れてきて、車の通行は難しいのではと思われた。小さな沢の左岸を道は続いたが、次第に細くなって山道と呼ぶ状態になってきた。ただ歩き始めてからずっと平坦だった。その山道に灌木が被さったり、また災害によるものか崩れている所が現れた。そこで右岸を歩いたり左岸を歩いたり、ときに河床を歩くこともあり、なかなかすんなりとは歩けなかった。けっこう難儀となったが、ときに易しい道になることもあった。途中で沢は二手に分かれたものの、西へ向かうのが正しいはずなので、脇へ逸れないように注意した。ずっと緩やかなままに西へと歩いて、もう県境尾根が間近になったとき、急斜面となった。尾根との標高差は20mほどでしかないので、適当に木に掴まりながら登って尾根に出た。そこまで歩き始めてから50分少々だった。そこからは南へと斜面を登れば石粉山のはずだった。やや急斜面になっており、登るほどにシダが道に被さって煩わしくなってきた。雪が付いているだけに少々やっかいだったが、ヤブの所は長くは続かず、歩き易くなったと思うと、広々とした所に出た。赤っぽい岩がむき出しになったピークが目の前にあり、そこが石粉山の山頂のようだった。辺りに木々は少なく、なろほど展望は良さそうだった。雪に滑らないようにその岩場のピークに立ってみた。東の方向が一番良く見えており、足下には車を止めている長谷池が見えており、そしてその左手は間近く六道山が迫っていた。南東方向には百間山も望めた。翻って西の岡山県側を見ると、高尾山が近くで端正な姿を見せていた。この展望をじっくり楽しみたいところだが、ここに立って北西からの風を強く受けることになった。強いだけでなく身を切られる冷たさだった。これでは長居をしずらく、一通り視線を巡らせて石粉山の様子が分かったところで下山とした。下山は歩いてきたコースを、すんなりと引き返すのみ。もうコースの様子が分かっていることでもあり、荒れた所も気にせず沢沿いをどんどん歩くと、山頂から50分とかからず長谷池の駐車地点に戻ってきた。山としてはごく小さな山だったが、新しく知ったこの県境の山が予想以上に展望の良かったことがうれしく、少し得をした気分になって長谷池を後にした。
(2011/1記)(2021/4改訂) |