梅雨どきは多少雨が降っても問題の無い山に登り、下山後は温泉で汗を流すのが一番だが、その考えで播州の山を探したとき、五峰山が面白そうに思えた。山としてごく低山で歩き易いだけでなく、西麓には滝野温泉ぽかぽがあって、希望通りと言えた。また五峰山だけでは物足りないのなら、そばにある播磨中央公園の散策を楽しめば良さそうだった。
2011年6月の最終土曜日は始め小雨の予想だった。そこで五峰山に向かおうと考えたのだが、前日になると曇り程度の予想に変わってきた。更に当日の朝には、ときどき晴れ間も見られるとなったので、五峰山にこだわる必要はなくなったが、北の空は思わしくなさそうだったので予定通り五峰山に向かうことにした。国道372号線を加東市へと向かって行く。その空は青空の色こそ薄いものの、もう快晴と呼べそうだった。車は下山後に播磨中央公園を散策することも考えて、中央公園の第1駐車場に止めた。駐車場は数台が止まっているだけで、閑散としていた。車の外に出ると、むっとする暑さだった。気温はと見ると、30℃を越えていた。陽射しは強く、一気に真夏に入った感じだった。ところで駐車場には播磨中央公園の案内板が立っており、それを見ると五峰山の最高点となる二等三角点ピーク(点名・光明寺)には、扇山の名が付いていた。また絵図には中央公園側からハイキングコースが山頂まで描かれていた。それを見て、五峰山のコースを変更することにした。当初は光明寺への車道を歩いて行き、光明寺からは五峰山の尾根を西へと歩いて、最高点(扇山)経由で滝野温泉側に下る考えだった。それが案内板に描かれているハイキングコースに興味が湧いて、扇山までは予定通り歩くものの、扇山からはハイキングコースで戻ってくることにした。当初の予定よりはずっと短くなるが、余った時間は播磨中央公園を散策しようと考えた。駐車場を離れると、おもいで橋を渡って山裾を走る舗装路を東へと歩いて行った。一帯は「いしぶみの丘」の名が付いており、点々と石碑が置かれていた。道はアスファルト舗装されており、サイクリングロードにもなっているようだった。緩やかな道なので歩くことは問題無かったが、30℃を越える暑さの中でアスファルトの道を歩くのは楽しいことでは無かった。黙々と歩くのみ。20分ほど歩いて金剛橋の位置に出た。橋は立体交差のためのもので、下に見える道が光明寺への車道だった。その車道へ下りる小径が金剛橋の手前にあり、それを下って下の車道に出るとると、そこに扇山の標識が立っていた。今下ってきた小径は山の方向にも通じていたのだが、どうやらそれが下山路として考えていたハイキングコースのようで、扇山まで通じているようだった。光明寺への車道を登り出すと、道ばたをアジサイの花が飾るようになった。そして林の中に入ると、木陰道となって少し涼しくなった。気温は29℃まで下がっていた。ときおり車が通過する。車道歩きは10分ほどで、光明寺の広い駐車場に着いた。そこからは参道を歩いて境内の散策だった。木立に囲まれた薄暗い参道を登って行くが、参道と言っても車一台分の道幅があり、歩いていると車が一台通り過ぎて行った。その途中で物見台跡の標識が現れたので、そちらへの小径に入った。「五峰の家」のそばを通って物見台跡に出ると、急に風を受けた。その風に吹かれながらベンチに座って小休憩とした。物見に使われたとあって展望は良く、南に向かって広々とした展望が広がっていた。足下にはヌタバ池、そして遠くは加古川市北限を限る山並みだった。そちらは少しうっすらとしていた。そこを離れて西へ歩くとすぐに見晴らし台があり、そこはせり出すように作られていたので、物見台跡よりも展望は良さそうだった。西には扇山もすっきりと見えていた。その見晴らし台からは本堂の案内標識に従って下って行った。再び薄暗い道となり、大慈院の横を通って仁王門に出た。その石段を登ると常行堂があり、更に奥へと進んだ所に本堂が建っていた。さすが新西国三十三ヶ所とあって、古刹の雰囲気は十分に漂っており、落ち着きある佇まいだった。暑い季節だけに他に人影は無く、パートナーと二人きりの空間だった。本堂のそばのベンチに腰掛けて、暫し静けさの中に身を置いていた。その本堂からは回り道をするように閼伽井(あかい)の井戸のそばを通って、仁王門まで戻ってきた。そのそばから扇山の登山道が始まっていた。参道では無く、ごく普通の山道がほぼ平坦路として西に続いていた。山上に広がる光明寺の境内の道とは平行する形だった。本堂の近くまで来たとき、本堂からの道が合流した。どうやら本堂側からも登山道へ来られたようだった。西へと歩いて行くと、程なく道は二手に分かれて、そのまま西へ向かえば滝野温泉へと下山する道で、左手の南の道が扇山の登山道だった。その扇山の登山道に入ると上り坂となり、階段になっている所もあった。特に急坂は無く、ごく普通の上りと言った感じで登って行くと、すぐに山頂が近づいた。その山頂手前の案内標識では山頂を「みはらし台」としていた。この扇山は二度目となるのだが、確か植林に囲まれて展望は悪かったはずなので、整備されたのかも知れないと思って近づくと、なるほど山頂の木は切られてベンチも置かれていた。そのベンチの座る所が畳になっていたので、少しばかり驚いたが、よく見ると樹脂加工のようだった。考えれば播磨中央公園からこの扇山までハイキングコースが作られたので、それに伴っての整備かと思われた。ただ「みはらし台」とは名ばかりで、三角点付近こそ広やかになっているものの、周囲は木々が視界を塞いでいた。わずかに西に切れ目があり、そこに覗くのは畑山のようだった。笠形山ぐらいは望めるのではと思っていたのだが、整備した人には展望を良くする考えは無かったようだった。そこは陽射しが当たるとあって、気温は31℃まで上がっていた。特に涼しい風も無かったので、小休止にとどめて山頂を離れた。後は中央公園へと下山するのみ。登ってきた登山道を引き返すと、すぐに南に下る道が分かれた。ハイキングコースと名付けられた道である。真っ直ぐに南へと下って行くのだが、一気に陽当たりが良くなってもう真夏の暑さだった。前方に遮るものの無い展望が現れたが、強い陽射しにたまらず下ることを優先した。クサリが張られていたり階段状の所があったりと、遊歩道状に整備されていた。ただ元は送電塔の巡視路だったようで、下る途中で二度送電塔と出会った。サイクリングロードに下り着くと、後は駐車地点へと舗装路を歩くだけなのだが、昼を回って35℃まで気温が上がっていた。その中をアスファルト道を歩くのはちょっとつらかった。ただ駐車場に戻り着きたい一心で歩いた。時間にして20分ほどだったが、駐車場に着いたときは、ただほっとする思いだった。もうそれ以上歩きたい気持ちは起きず、また温泉に浸かりたい気持ちも消えてしまった。そうなると帰り支度をするのみ。そそくさと身支度を整えて駐車場を後にした。何となく消化不良気味の登山になってしまったの思いを持ってしまった。
(2011/7記)(2021/7改訂) |