2010年も11月の半ばを過ぎると、播州南部が紅葉の見頃を迎えてきた。この年の紅葉は例年よりも鮮やかさがあるようで、23日の勤労感謝の日に上郡町から佐用町へと国道373号線を北上していると、どの山も淡い茶色から黄色、薄赤、赤と様々な色で紅葉していた。中でも目を惹いたのが生駒山の紅葉で、隈見橋のそばを通って東から見るようになると、全山総てが紅葉している姿を見せてくれた。この日の目的は上月城跡のある荒神山のハイキングだったが、この山だけで一日を過ごすのはもったいなく思え、そちらは午前に済ませて、午後は生駒山を登ろうと考えた。
予定通り荒神山を午前で済ませると、さっそく生駒山へと向かった。上郡町に戻ると、朝はほとんど雲は見られなかった空が、上月町と同様に雲の広がる空に替わっていた。全天の七割方は雲が占めるまでになっていた。その雲の様子、光の透明感と言い、冬が近づいていることを思わせた。生駒山の南麓にある羽山登山口に着いたのは12時20分。そのそばの駐車スペースに車を止める。登山道を登り始めたときはちょうど陽射しが当たっていたが、ほどなく陽は雲に隠された。生駒山を歩くには4年半ぶりだったが、道そばの標識が新しくなっているように思えた。雲が増えているため陽射しは現れたり消えたりを繰り返す。期待した尾根の紅葉は、実際に歩いてみると、少し盛りを過ぎているように見えた。盛りを越えたときのほうが、遠目には良く見えるのだろう。それでもまだまだ見頃の木々も多かった。落葉が進んでいることで、登山道はすっかり落ち葉道になっていた。その落ち葉を踏むとサクサクと音をたてるのは、まさに秋の音だった。山頂部が見えてくると、そちらは明るい黄葉の木に包まれていた。この生駒山は登り易さだけでなく、露岩の上を歩いたり、そして登るほどに展望が広がってきたりと、小さな里山なのだが、登山として十分に楽しめる山だった。馬の蹄跡の岩場を登り、また落ち葉の道を歩き、そして荷置岩を越えて山頂直下へ。駒山城跡案内図を見た後、ひと登りと言った感じで山頂となる東峰のピークに着いた。そこは本丸跡。出城だったと言われるだけにごく小さな城だったようで、狭い本丸跡だった。ただ城跡だけに平らになっており、ベンチも置かれて休むには良い所だった。その山頂だったが、そこには北風が強く吹いており、急に肌寒さを感じた。ただ風に冷たさが少ないのは、まだ秋のためだろう。その風の中でも陽射しが現れると、まずまずの過ごしやすさだった。この本丸を少し北に下った位置も段状になっており、そこからは千種川を挟んで愛宕山が見えていた。その愛宕山も全姿を紅葉で彩っていた。ひとしきり紅葉の山頂を楽しんで下山とする。下山では往路を引き返さず、鉄塔跡の先から左手に分かれる登山道を下ることにした。その井上(いのかみ)コースは入るとすぐに木立に囲まれるようになり、そして細い道でジグザグに続いた。午後とあってあまり光も届かず、何となくただ下っているだけの雰囲気だった。羽山コースが伸びやかさがあるだけにマイナーな感じを持ってしまうが、緩やかなままに歩けて、まずはごく普通の里山道と言えた。すたすたと下ったため、分岐点から13分で登山口に下り着いた。後は山すそを通る車道を歩いて駐車地点へと戻って行った。
(2010/12記)(2018/8写真改定) |