姫路市に住んでいると、小さな山には不自由せず、ごく気楽に山の上で昼食を楽しめる。そして北の展望を楽しめる山、海の展望を楽しめる山、街並みを眺める山など選択する楽しさもある。その気楽に山で昼どきを過ごそうとの気持ちで嫦娥山を訪れたのは、2009年11月の第二土曜日だった。この日は午前は雨模様、午後も曇りとの予想だったため、特に山で過ごすことは考えていなかったのだが、午前の早い時間から天気は回復し出した。そして8時を回ると、外はすっかり快晴だった。しかも澄んだ視界だった。それを楽しまないのはもったいないと、そこで海を眺める山で昼どきを過ごすことにした。但し気軽に登る山でと考えて、久々に嫦娥山に登ってみることを思い付いたものである。嫦娥山を最も簡単に登るのなら屋津坂を峠の位置まで車を進めて、そこにある登山口から登れば20分ばかりで山頂に立てるが、ただそれでは簡単過ぎるので、室津の港から歩き出すことにした。まずは屋津坂を登って峠の登山口へ、そして御津山脈の縦走路を歩いて山頂に立つ。山頂で昼を過ごした後は南の尾根に付く小径をを下って戻って来ようとの考えだった。昼食で過ごす時間を除けば、ざっと一時間半ほどのハイキングとなりそうだった。
室津へと国道250号線を走ると、岩見の交差点を過ぎてから車道は海沿いを走り出した。その海側から真っ先に目に飛び込んできたのは小豆島で、何ともくっきりと見えていた。澄んだ視界は遠くのものが近くに見えるようで、山のひだもはっきりと小豆島が大きく眺められた。家島諸島もしかりで、いつもより数kmは近づいている感じで眺められた。車は室津漁港の北西の位置、友君橋にごく近い位置の、広い空き地の一角に駐車とした。そこからは友君橋が見上げるようにして眺められた。そして11時を回った時間からミニハイキングを開始した。その嫦娥山ハイキングが、予想していたことと大きく違ってしまった。前回の登山から僅か3年半しか経っていないのに、嫦娥山は大きく変貌していた。それも良い方の変貌では無かった。一度はハイキングコースとして整備されて、山頂からの展望も楽しめたのだが、登山道は分かるものの一部ではシダが覆い被さっており、山頂はすっかり笹ヤブになっていた。なっていたと言うよりも昔の姿に戻っていた。このままでは登山道もいずれ消えてしまうのではと思ってしまった。軽いハイキングのつもりが、ちょっとしたヤブ山ハイキングになってしまったが、変わりゆく嫦娥山を見たことで、改めて瀬戸内が温暖の地であることを再認識させられた。陽光に恵まれる瀬戸内の気候は、植物にとっては伸び伸びと育つことが出来る環境のようだった。ただ今一つ展望を楽しめなかったため、下山後は室津の町並み散策の後に、室津の鎮守の森、加茂神社へと足を向けた。そして神社の一角から瀬戸の海を思いっきり眺めて、展望に対する鬱屈を少しは解消した。おかげで昼食どきだけのハイキングが、半日たっぷりのハイキングとなってしまったが、充実度は十分な午後になったのは良かった。
(2009/11記)(2021/1改訂) |