嫦娥山は鳩が峰の峠からだと、ごく簡単に登れてしまうので、少し物足りなさを覚えるが、室津港側からだと、正味266mを登ることになり、またちょっとヤブコギもあって、少しだが手応えが出てくる。但し山頂に立っても特に展望が良いとは言えず、また近年はササが茂って、ヤブ山に戻ろうとしているので、多くの人に親しまれる山とは言い難いかと思える。ただこちらとしては、そのヤブっぽさも悪いとは思えず、室津港から周回で歩けることや、冬の日の山頂は瀬戸内の陽光を浴びられることで、寒い季節になると、なぜか訪れたくなる山である。
2012年の2月に入っての最初の土曜日は、北風が強く吹く寒い日だった。但し姫路市内の天気は良かった。そこで市内の北部の山で昼どきを過ごそうと、10時過ぎに自宅を離れたのだが、西の空を見ると、御津山脈が明るい陽射しを受けて、いかにも暖かそうに眺められた。それを見て、急きょ進路を変更して西に向かった。地図を準備していなかったため、易しいコースを登ろうと考えて、嫦娥山を室津港側から登ることを思い付いた。適度な運動になり、山頂のササ地はヤブながらも、きっと暖かいだろうと思えてのことだった。室津港に着いたのは11時前。車は港の北西にある駐車場に駐車とした。そこから船溜まりを歩いた後、町並みを抜けて東へと延びる坂道を登って行った。室津港からのコースは何度か訪れているので詳細は書かないが、室津バス停近くの登山口から、嫦娥山に取り付いた。一部すっかりヤブになった所を通り抜けると、竹林に入った。その竹林には目印の赤テープが点々と続いていた。地図を持たないので、赤テープを忠実に辿って行く。竹林を抜けるとウバメガシの林が広がって、いかにも室津の山らしい雰囲気となった。そして山上に出ると、ササが増えてきた。そのままササヤブの山頂かと思っていると、山頂はササが広く刈られており、すっきりとした姿に替わっていた。冷たい風は山頂に無く、期待通りに暖かい陽射しを受けながら、昼どきを過ごすことが出来た。山頂からは少し瀬戸の海が眺められるが、少しうっすらと見えていた。陽射しを受けて海は光っており、のどかさが漂っていた。昼を済ませると、下山は北西方向へと、鳩が峰を目指した。そちらの登山道も以前は少しヤブっぽくなっていたのだが、シダや草が刈られていた。おかげでずっと歩き易くなっていた。鳩が峰からは室津街道に入る。途中に大浦湾の眺められる所があり、その辺りはいかにも古の街道の雰囲気があって、好きな所である。その下山中に、明るかった空も雲が広がり出して、陽射しの消えているときが多くなってきた。麓が近づいて竹林に入ると、街道らしさは消えて、ただの竹ヤブの雰囲気となるので、そこは足早に下って、最後は国道250号線のそばに下り着いた。期待通りに嫦娥山に登れたことに満足して、駐車地点へと戻って行った。
(2012/2記)(2021/1改訂) |