淡路島は平野部よりも山地の方がずっと多いのだが、なだらかな地形のためか全体に丘の雰囲気があり、登山の対象となる山は諭鶴羽山、柏原山など限られている。その淡路島だが、丘程度の山にもけっこう山名が付いており、里山を散策するぐらいの気持ちで登ってみるのも面白いのではと考えた。その考えが浮かんだのも高速道の休日割引制度があってのもので、通常の料金なら、ごく低山をわざわざ高い通行料を払ってまで行こうとは考えなかった。そして行く限りは少なくとも三つぐらいは登ろうと考えて淡路島の地図を眺めると、その低山も更に山頂まで車道の通じるものがあり、ハイキング対象にしたい山はなかなか見つけ難かった。その中で山頂まで破線の道が描かれており、しかも山名の付く山としてこの高倉山が目に付いた。この他に選んだのは一等三角点の山として竜宝寺山と紅葉の名所として有名な東山寺に近い摩耶山の三山だった。その三つの山を登る順番として、津名一宮ICに近い高倉山を最初に登ろうと考えた。向かったのは2009年11月の最後の土曜日だった。
雲の広がる日で、明石海峡大橋を渡って見る淡路の空は、雲に広く覆われていた。ただどんよりとした感じでは無く、薄曇りよりも少し濃いぐらいの感じだった。津名一宮ICを下りると、進む方向、南の方向に小ぶりながら富士型の姿の良い山が眺められた。どうみても名のありそうな山で、方角からしてそれが高倉山のようだった。その富士型の山に注目しながら県道66号線を走って近づくと、高倉神社の案内標識が現れた。それは山頂に建つ神社の名のようだったが、標識があることからして山頂まで車で行けそうだった。それではハイキングにならないので、途中から歩く考えで高倉山へと向かう枝道に入った。細い車道をそろそろと高倉山に近づくと、千通寺のそばに出た。そこから前方に見える高倉山までは手頃な距離になっており、そこで千通寺から歩き始めることにした。千通寺の脇にあった路肩スペースに車を止めてスタートとした。空は相変わらず雲が多かったが、うっすら青空も覗いていた。車道は緩やかに舗装路として続いていた。但し道幅は車1台分しかなく、林道と呼べそうだった。すぐに山域に入り、周囲は常緑樹の多い雑木林の風景となった。少しひんやりとしており、気温を見ると12℃だった。車道は山の姿のままに中腹を過ぎて傾斜がきつくなってきた。冬にはスリップを起こしそうな傾斜角だった。ただ登る分にはうっすら汗をかいて体が温まるので悪くなかった。山頂が間近になると傾斜は緩み、広い空き地がそばに見えた。そこは駐車場のようだった。車道はまだ山頂へと続いていたが、その先はダートの荒れ道になっているので、車は駐車場に止めるのが無難なようだった。ダート道を登って山頂に着くと、そこはすっかり神社の佇まいだった。広い境内があり、一段高い所に小ぶりの神社が建っていた。境内は落ち着いた雰囲気があり、桜の木が多いようで春の季節は里人で賑わうのではと思えた。ここまで展望は無かったのだが、境内は東の方向の木々が空いており、そこからは大阪湾が見えていた。うっすらとしか見えなかったが、左手に浮かぶ島は友ヶ島のようだった。高倉神社への石段を登り神社の裏手に回ると、そこも展望地になっており、北の方向に妙見山が眺められた。山頂は北風が強く吹いており、けっこう肌寒さを感じながらも展望を楽しんだ。この山頂では少し早かったが、昼食をとることにした。石段の脇の置き石に腰掛けて、境内の佇まいを眺めながらの昼食だった。神社の両脇にカエデの木があり、すっかり紅葉しているのも悪くなかった。ときおり雲が割れて陽の射すことがあり、そのときは暖かさが広がった。その休憩場所のそばに標識が立っており、近くに潜岩(くぐりいわ)と名付けられた岩があるようで、展望もあるようだった。特に時間を決めて行動していることでも無かったので、その潜岩を見ることにした。標識では北西方向に下って行くようで、そちらを見ると小径が続いていた。すぐに着くつもりで小径を下り出すと、数十メートルほど下ることになった。更にトラバースして北の方向に歩いて漸く潜岩の前に出た。大ぶりの岩が集まっていたが、期待した展望は周囲の竹が育ったためか、ほとんど得られなかった。ちょっと期待外れの気持ちで引き返した。山頂は相変わらず人の気配は無くひっそりとしており、ただ小鳥のさえずりが聞こえるだけだった。上空はいくぶん青空が広がり出しているように思えた。まずは高倉山の山頂を楽しめたことでもあり、下山とした。下山は歩いてきた車道を戻るのみ。すたすたと下ると16分で駐車地点に戻り着いた。車道があるので山頂へはやはり車で行く人がほとんどではと思えるが、のんびりと麓から歩くのも悪くないと思えた高倉山だった。
(2009/12記)(2021/10改訂) |