国道2号線から播磨科学公園都市に向かうには、相生市で竜泉交差点を右折して県道44号線を北上することになるが、その県道が感状山に近づいたとき、感状山の東向かいにすっきりとした三角形の山が現れる。山頂には岩峰もあって、とうてい標高が250メートルの山とは思えぬ鋭さがある。それが権現山だった。その北には一段と鋭い高巖の岩峰もあり、ちょっと面白い尾根である。ただやはり標高が低いだけに、ハイキングとなるとごく短い時間で終わることになる。
2009年2月の初日は日曜日。午後に時間があり、半日程度の軽いハイキングをしようと考えたとき、この二つの山を登ることを思いついた。高巖山には2003年に登っていたが、権現山はまだだった。その権現山は地元では当然有名な山で、どうやら西麓の磐座(いわくら)神社から登られているようだった。権現山から登ろうと磐座神社に着いたのは13時を過ぎた時間。神社の近くに車を止めようと考えていたのだが、神社の前にある橋は老朽化しており、ロープが張られて進入禁止になっていた。そこで下山を予定していた高巖山側の登山口にある八幡神社に移動して、その前に駐車とした。前回の高巖山登山と同じである。そして磐座神社へと歩き始めた。県道44号線は車の往来が多かったが、歩道が付いており安全に歩いて行けた。雲の多い空だったが、上空には青空も見えている。午後は晴れの予想でもあったので、そのうちに晴れてくることを期待した。30分近く歩いて磐座神社に着いた。古びた神社で、ちょっと侘びしさがあった。その神社の裏手より登る予定だったが、山裾は猪垣がきっちりと張られていた。よく見ると通り口があり、針金で止めてあった。その針金を外して通過し、そして針金で扉を再び止める。その先に小径があったので、そのまま歩いて行けばよいと思っていると、登り坂になることも無く、すぐに不確かになってしまった。尾根の方向を見ると木立は空いており、尾根も近くに見えていた。傾斜もさほどでないので、適当に登って行くことにした。小枝に掴まったりしながら歩き易い所を登って行くと、尾根に近いところで小径に出会った。その小径を歩いて尾根に出ると、尾根道に合流した。どうも尾根端からも登山道があるのかも知れない。ここまで15分ほどなので、やはりごく小さな山と言えそうだった。その尾根を歩き出して程なく石の鳥居が現れ、その先で大きな岩に出会った。まん丸と言った感じの岩があり、そこは小さなピーク(竜王山と言うらしい)になっていた。岩はまさにご神体と言った風格があり、小さな祠も二つ置かれていた。その聖なる地を通り過ぎると、その先に木立を通して権現山の山頂が見えてきた。ひと登りの感じで山頂に着く。尾根を歩くようになって強い風を受けていたのだが、権現山山頂は一段と風が強かった。気温は7℃ほどだったが、それ以上の寒さに感じられた。その山頂は岩場になっており、展望は良かった。西向かいに感状山、そして南へと相生の低山群が続いていた。南の方は雲が少ないようで、宝台山が逆光にうっすら光っていた。それがこの権現山の手前辺りから急に雲が増え、黒みのある雲が上空を覆っていた。西向かいの感状山も尾根続きとなる高巖山、高巖も暗く沈んでいた。その中にあって東の空に大蔵山が明るく陽射しを受けていた。どうやら雲は続いたり切れたりしているようだった。また北には青空が見えており、それが近づいてくるように見えた。この日の目的に権現山を登る以外にも、冬の陽射しを受けた高巖もぜひ眺めたいとの希望があったので、今暫く待ってみることにした。ただちょっと風が冷たすぎるので、岩陰に身を潜めて待つことにする。ところがこの日の雲は何とも意地悪で、上空に青空が広がってその勢いで太陽の位置まで来るのかと見ていると、なぜか太陽の回りのみ他から雲が集まって来て、いつまでも太陽を隠したままだった。更に意地悪なことに感状山にはときおり陽射しが漏れるのに、この権現山から高巖だけに光が当たらなかった。待つこと40分。結局諦めて高巖山への尾根歩きに移ったが、どうも巖座神社に挨拶もせず登ったことで、神様の機嫌を損ねてしまったのかも知れなかった。高巖山へは尾根なりに歩いて行く。木立を通して高巖山山頂が望まれたが、垂直に近い岩壁を見せており、アルプス的な風貌を見せていた。高巖山が近づくと傾斜がきつくなり、そしてシダの茂る所に突っ込んだ。そこを足でかき分けるようにして歩いて行く。道の見えない所もあったが、目印テープがあって逸れるようなことは無かった。それも高巖山山頂のそばまでのことで、また歩き易くなった。権現山から高巖山までは20分ほどの距離だったが、ヤブコギをしたことで少しは歩いた感じがした。高巖山は二度目とあって、山頂の佇まいや山頂展望の記憶がよみがえって少し懐かしさがあった。そしていよいよこの尾根のシンボルである高巖に近づいて行く。槍先を突き上げたようなその鋭い姿は、風景として十分な面白さがあった。ただ直前まで近づくと、数メートルの高さしか無いだけに、急に小ぶりな岩に見えてしまうのは残念だった。陽射しも無く風の強いこともあって、そのまま通過して下山することにした。この高巖から北への道は、尾根では一番歩き易く、ごく気楽な雰囲気だった。さっさと下山するとすぐに鞍部に着いてしまった。鞍部では尾根道と交差する道があり、その小径を左手に入って能下集落へと下って行く。すぐに八幡神社の前に止めてある自分の車が見えてきた。高巖から僅か15分での下山だった。この日の目的であった明るく陽射しを受けた高巖を見ることが出来ぬままの下山になってしまい、どうもすっきりしない気持ちを抱えてしまった。
(2009/3記)(2020/1写真改訂) |