2007年の5月連休の一日を山菜採りで楽しもうと但馬に出かけることにしたが、山菜採りだけで行くのはもったいないと思え、低山の一つでも登ろうと考えた。その考えの中で、近々余部鉄橋が新しい橋に付け替えられるニュースのあったことを思い出し、余部鉄橋を見る山も面白いのではと思えた。そこで「余部」の地図を開い興味を持ったのが、鉄橋に一番近い三角点の山として点名・丹生野を持つ284mピークだった。どこから登るかは現地で考えることにした。姫路を離れたのは6時半過ぎ。瀬戸内に近い所から日本海のそばまで行くのはやはり時間がかかるもので、2時間半近くを必要とした。余部鉄橋に来てみると、連休中とあって多くの人が来ており、駐車場に入りきらない車が国道上にも並んでいた。北海道ナンバーの車も混じっていた。それでもすぐに立ち去る車もあるため、駐車場の片隅に何とか止めることが出来た。この日の空はモヤの強い空だったが、鉄橋は間近で見るため、淡い青空の下に鉄の持つ力強い造形物として、風格を持って建っていた。明治45年完成の鉄橋は多くの人を惹きつける魅力があるようだった。さて小橋を渡ってどこから登ろうかと、海岸側に回ってみると、そちらは断崖のようになって、地図で見るより険しい地形だった。それに人の目も多過ぎた。そこで長谷川の右岸を走る細い車道を南へと、山裾に注意しながら歩いて行った。すると民家の間から山に向かう小径が見えたので、それを進んでみることにした。よく踏まれたその道は民家の背後を回って山道となった。そして少し登ると人影を見た。そこは余部鉄橋の撮影ポイントのようで、鉄道マニアが列車が来るのを待っているようだった。なるほどそこからは鉄橋を少し見上げる形で全景を見ることが出来、列車が来れば良い絵になりそうだった。はっきりした小径はそこまでだったが、そこから上を見ると、緩やかな斜面に木々は少なく、けっこう簡単に登れそうに見えた。そこで適当に登って行くことにした。すると少し登っただけでまた山道に出会った。その道は始めに歩いた小径より、今少し南寄りの麓から来ているようで、尾根まで通じていることを期待して辿って行くことにした。山道はあまり歩かれていないようで、少し草深くなっている所もあり、また分かり難くなっている所もあったが、ジグザグ道で尾根へと近づいた。ところでこの山を登る目的の一つに余部鉄橋を見ることだったが、道の周囲は木々が茂っており、木々の隙間からちらりと見えるだけだった。むしろ南の方向となる久斗山の尾根が眺められた。山道は小さな尾根に着いて終わった。その尾根は東に向かっており、尾根にはクマザサが少しあり低木の小枝も煩わしく感じたが、軽いヤブコギ程度で登って行けた。そして小さなピークに出て南北に走る尾根に合流した。地図を見ると240mほどのピークだった。そこから先はほとんど平坦と言ってよい尾根になり、木々も空いてずっと歩き易くなった。そして明るくなった。300mに満たない低山だったが、瀬戸内側の山と違って落葉樹が多いようで、それが新緑の盛りとなっており、その瑞々しい緑の色はこの季節ならではの美しさだった。但し相変わらず展望は無かった。尾根なりに南へと登って行って最高点辺りに来ると、一番高い位置は南北尾根よりも少し東にあるようだった。地図を見るとそちらに三角点記号があるため、その最高点へと尾根を折れた。そして僅かな距離で三等三角点がる284mピークに着いた。そこはいっそう木々に囲まれており、自然林のまっただ中の雰囲気だった。新緑がまぶしいばかりに陽を受けていた。ただ展望はと言えば木々を通して北の方向に青い海原が僅かに覗くだけだった。すぐに引き返そうかと考えたが、三角点の回りが少し草ヤブになっていたのが気にかかり、ハサミで周囲を少々刈り込んですっきりとさせた。一息入れたところで引き返すことにした。駐車地点にすんなり戻りたかったため、往路を引き返すことにした。尾根を緩やかに登ってきたが、下山は緩やかに下ることになり、軽い足取りで戻れることになった。そしてやけに美しい新緑に目を楽しませた。麓に下り着くと昼に近い時間になっており、余部鉄橋の周りは朝とは比較にならない大勢の人で大賑わいだった。国道に駐車する車の対応でパトカーまで出動しており、余部鉄橋の異常な人気に目を見張る思いだった。
(2007/5記)(2015/1改訂)(2022/1改訂2) |