山陽自動車道を東から戻って来たときは姫路東ICで降りることが多いが、そのICの北で採石場として斜面を大きく削られている山があり、その山の二つのピークが桑原山と伝塚山だった。その両山の名を知ったのは郷土誌「わが郷土谷外」からで、一度は登っておきたいと考えていたが、どうもヤブ山のようであり、冬場に機会があればと考えていた。それが残暑の厳しい盛りに登ることになった。2012年のお盆休暇は天気が悪く、そこで近場の山にでも登ろうと、姫路市飾東町の庄山を登ったところ、その庄山から良く見えていたのが、この桑原山と伝塚山だった。山陽自動車道を挟んで対峙しているのだから、木々の切れ目さえあれば当然見えるのだが、間近で見たことから急に登りたくなった。そこで3週間後の週末に早速の実行とした。但しパートナーは同行出来ず、単独で向かった。ヤブ山が想定されたのでどこから登っても同じと思え、そこで二つの山を歩けるルートとして、桑原山の東麓側からアプローチすることにした。近くには姫路セントラルパークがあった。
国道372号線を北東へと走って山陽自動車道の高架を潜ると、その先の交差点で左折した。その道を走ればセントラルパークに向かうことになる。車道は上り坂となり、桑原山の東麓と思える位置に来たとき、その山裾に広い山道が見えた。近くに車が止められそうでもあり、そこから歩き始めることにした。空は快晴で、残暑厳しい中での登りになりそうだった。山裾の道は車1台分の幅があり、竹林の中を続いていた。歩くうちに道幅は狭くなり、竹林は雑木林へと変わった。そして堰堤のそばに出た。道はそこまでで、その先より斜面を登ることになった。辺りは疎らな雑木林で、下草としてシダもあったが、軽いヤブコギ程度で登って行けた。登るうちにヤブが濃くなってすんなりとは歩けなくなってきた。灌木に阻まれたりシダ帯に突っ込んだり、蜘蛛の巣に引っかかったりとすっかり純然たるヤブ山になってきた。斜面が緩くなって小さなピークに着くと、南西方向に桑原山が木々の隙間からだったが望めた。そこからは尾根を辿るようになったが、ヤブコギであることに変わりなかった。風が通らず、大汗をかいての登りでもあった。ようよう傳塚山の山頂に着くと、そこは全くヤブのピークだった。そこからはコンパスを頼りに西の方向へと下ると、尾根がはっきりしてきた。また尾根も軽いヤブコギ程度で歩いて行けた。その西へと歩き出して、数分で前方が明るくなってきた。そして抜け出して現れたのは、広々とした採石場の風景だった。山陽道からは見上げるようにして眺めた山崎建設の採石場が、眼下に広がっていた。その中央には池も見えている。日曜日とあって採石場は休みのようで、人影は見えなかった。その採石場から遠方に目を移すと、西には新龍アルプスを、南東には高御位山、そして南には仁寿山が眺められた。また遠く瀬戸の島も一望だった。暫しその砕石場の風景を眺めた後、砕石場の縁を北へと歩いた。そこは直射光が降り注ぐとあって、けっこう暑さに参ってきた。またイバラが多くあり、それを切り開くのが面倒だった。砕石場の縁を北辺まで進んだとき、木陰を見つけて、そこに体を横たえた。立っているのが辛くなったからだが、そのまま暫しの昼寝とした。その一休みで少しは体力が快復したので、次は桑原山のピークを目指した。砕石場の縁を離れて尾根を伝い出すも、そこもイバラがきつかった。また灌木も煩わしく、またもやヤブコギだった。小さなピークを越した先で、一度木々は疎らになって歩き易くなったが、山頂が近づいてまたヤブとなった。そのヤブを少しかき分けた先が三角点のある桑原山の山頂だった。そこも三角点の辺りだけ空いているだけで、周囲は雑木が視界を閉ざしていた。そこでも横になろうとしたのだが、やたらとヤブ蚊が現れたのには参った。20匹以上は目の前におり、それを一匹ずつ退治していると、少しは減って、そこで漸く横になることが出来た。休んでいるとほのかな風も感じるようになり、少しは安らげる感じになれた。山頂ではただ横になっているだけで、全く動かなかった。それを40分ほど続けていると、起き上がる気力が出てきたので、そこで漸く下山とした。駐車地点に戻るには忠実に歩いてきたコースを戻れば良かったが、ヤブが多すぎるので、それは止めることにした。一度採石場のそばまで戻ると、そこからは傳塚山に続く尾根には向かわず、その尾根の北にある谷筋に入った。これが意外と歩き易かった。歩き易いと言っても軽いヤブコギはしたが、木々の空いた所を選びながら下ると、けっこう順調に下れた。そのうちに谷筋は沢になり、水が流れるようになった。基本的には沢そばを下るも、歩き難くなると沢の反対側に移ったり、沢の中を歩いたりした。ほぼ緩やかな地形となって、沢は最後にコンクリートの水路となった。その水路沿いの小径を歩いて行くと、樹林を抜け出して車道が間近になった。但しフェンスに阻まれたため、フェンス沿いのヤブ道を南へと歩いて行った。どこまでヤブ道を歩くのかと思いきや、フェンスは程なく終わって広い空き地に出た。そこからは姫路セントラルパークの入口が目の前だった。もう後は車道と平行した広い歩道を歩くのみ。歩道は木陰になっており、更に緩やかな下り坂だったので、ごく気楽に歩いて行けた。そして広場の位置から10分で駐車地点に戻って来られた。残暑厳しい中での桑原山登山は、灌木ヤブにシダヤブ、イバラヤブと、ヤブ山登山の厳しさを十分に味わえたが、採石場をパノラマで眺められたので、まずまず面白かったと思うことが出来た。
(2012/9記)(2021/4改訂) |