姫路市内の近郊でごく気軽に瀬戸内海を眺めるハイキングを楽しむとなると、このたつの市の南西、旧御津町と相生市を分ける雄鷹台山から仏ヶ台山へと続く尾根が一番ではと思っている。特に視界の澄む冬の季節が良く、小春日和の中で陽光を浴びながら瀬戸の島々を眺めるのは、ちょっとした旅情もあって良いものである。
2008年2月は建国記念日が月曜日にあり、その週末は三連休となった。ところが土曜日は播州南部も雪が降るという荒れた天気となり、翌日曜日も午前は雲の多い空だった。遠出は諦めていたが、少しは体を動かしたいと考えていたところ、昼になって空は回復に向かい出した。その空を見て午後のひとときをミニハイキングで楽しもうと考えた。そして久々に瀬戸内海を間近で眺めるのも悪くないと思い、自然と浮かんで来たのがこの御津山脈西部の尾根だった。昼食を済ませると、さっそく車を走らせた。午後の登山のため雄鷹台山だけに登ろうと考えて、その雄鷹台山への一番簡単なアプローチとして屋津坂の峠にある登山口へと向かった。その屋津坂へと揖保川町側から車を進めていると、てっきり快晴になると思っていた空は、黒雲が広がろうとしていた。どうやら北の雪雲が流れてきたようだった。屋津坂に通じる車道へと入り、峠の登山口のそばにある車1台分の駐車スペースに車を止めた。その頃には上空はすっかり曇り空だった。いずれは晴れるものと気にせず歩き出すと、5分と歩かないうちに小雨が降り出した。そのまま登っていると少し強い降りになったため、雌雄大岩のそばでいっとき雨宿りとした。雨は通り雨だったようで、5分もすると止んだため登りを再開した。上空はまだ黒雲が広がっていたが、北の空には青空も見えていたので、いずれは晴れてきそうだった。雄鷹台山の山頂が近づくと展望地が現れたが、空はまだ暗かったためそのまま通り過ぎた。そして山頂に立ったのは14時前だった。雨宿りをしたこともあって足はほとんど疲れていなかった。これで終わるにはあまりにも簡単過ぎるため、せっかく尾根に出ていることでもあり、午後に歩くには少し距離が長いと思えたが、仏ヶ台山までの尾根歩きを楽しむことにした。始めに下り坂が続いた。最初はただ灌木の中を歩くだけだったが、次第に瀬戸内海が現れて来た。始めに大浦港の風景が現れ、歩くほどにその奥の室津港が姿を見せて来た。尾根はさほどの起伏も無く、小笹に囲まれた適度な尾根道が続いていた。ただ以前と比べると少しシダが増えて来たように思われた。その少し荒れ気味の方が自然な雰囲気も出て悪くは無かった。適度な荒れ道を歩いて行くうちに少しずつ瀬戸の風景が変わって行くが、その様を眺めていると、ちょっとした旅をしている気分になってやはりこの尾根歩きは楽しいと思った。特にこの日は視界が良く澄んでおり、瀬戸の島々が鮮やかに見えていた。そして海はベタ凪で、まさにこれが瀬戸内海だという風景だった。展望に出会うたびに足を止め、そして陽射しを浴びていた。その陽射しはこの冬一番と思える暖かさだった。それにしてもこのハイキングには好条件の天気となったのに、尾根には他に人影は見なかった。仏ヶ台山が近づくと緩く上り坂が続くが、少し木が切られたのか灌木が疎らになったようで、すっきりとした印象を受けた。もう空には大きな雲は見えず、澄んだ空が広がっていた。そして仏ヶ台山の山頂に着いた。そこは以前と変わらぬ佇まいだった。ただ東側の木々が減ったのか、そこからは御津山脈の核心部が広く眺められ、北東遠くには大蔵山も望まれた。その仏ヶ台山からの展望を楽しんで引き返すことにした。帰りの尾根歩きはすっかり快晴の中だった。再び瀬戸の風景を眺めながらで、特に柏第三展望台は尾根一番の展望地とあって、暫しの休憩とした。室津港は一軒一軒までくっきりと見えており、そして海上では養殖のためか小船が動き回っていた。その風景を眺めていると時間の経つのは早かった。そのため雄鷹台山から登山口へと下りる頃にはすっかり夕暮れの光となっており、瀬戸の海も灰色へと変わろうとしていた。
(2008/2記)(2021/12写真改訂) |