荒山は播州南部では目立つ山の一つと言えそうで、国道2号線を西へと走っていると相生市を過ぎた辺りでその丸みのある姿が現れて、思わず「荒山」と一声かけたくなる山である。その荒山も登山としてはごく簡単に山頂に立ててしまい、またその山頂の展望は無いとも言えるもので、一度は登ったもののもう一度登ってみたいとの気持ちは起きなかった。その荒山の記憶も10年もすれば薄れるもので、山頂に立つには気楽な山との印象のみが強くなっていた。そのためか軽く登って山頂で昼食をとるのに手頃な山の候補として考えるようになっていた。その考えで再び荒山に向かったのは2009年の建国記念日だった。
この日の兵庫北部の空は荒れていそうであり、また午後には用事もあって、昼どきのみを近くの山で過ごそうと考えた。そして荒山が思い浮かんだものである。国道2号線は二車線化が進められており、すっと相生市内を抜けられるのは有り難かった。そして荒山がすっきりと現れた。この日は薄ぼんやりとした空で、いくぶん黄色みを帯びているように見られた。黄砂の影響かも知れなかった。有年駅前で国道2号線を離れ、周世坂への車道に入った。すぐに上り坂が始まり、二度ほど急カーブを曲がると荒山の登山口が見えた。そこに駐車ポイントは無いため、少し行き過ぎた所に位置する陰山池のそばに車を止めた。池を見ると二羽のカモが仲良く湖面を泳いでいた。そこから登山口までは2分とかからぬ距離だった。登山道は送電塔の巡視路でもあり、道幅も適度で良い感じで登って行けた。道そばにはシダが茂っていたり低木群がある風景は、ごく普通に見る播州の低山のものだった。すぐに送電塔の立つ位置に着くと、巡視路以外にも尾根道が見えたので、そちらを往路として歩くことにした。ちょっとヤブっぽい雰囲気だったが、僅かな距離でまた巡視路に合流した。その先でやや急坂が始まり、大きな岩も見られるようになった。少しは汗のかける所で、その坂を楽しむように登って行くと、もう山頂は近いのか道は緩やかになった。そして周囲は雑木林だった。すぐには山頂には着かず、今少し平坦なまま進んで、軽く登った所にマイクロウェーブ反射板が建っていた。これも荒山を遠くから識別出来る目印と言えた。その反射板からほんの僅か離れた所に四等三角点(点名・荒山)を見た。その三角点の位置も反射板の位置も相変わらず展望は無かったが、陽射しはたっぷり受けていた。どちらかと言えば三角点の方にくつろげる雰囲気があったため、そちらで昼休憩とした。風は当たらず陽だまりとなっており、その十分な暖かさの中でのんびりと昼を楽しむことが出来た。12時となって腰を上げた。登っているときに岩場の位置が展望が良さそうに見えたので、下山ではそこを注意しながら下っていると、一つの岩が目に止まった。そこは登山道から数メートル離れていたが、その岩に上がると意外と大きな岩で、上は平らになって良い感じの岩棚になっていた。そして期待通りに展望が広がっていた。足元を見ると矢野川に沿ってJRと国道2号線が走っていた。ちょうど長い貨物列車が上郡駅へと大きなカーブを曲がっていた。山としては間近に宝台山があり、黒沢山も近かった。ただこの日の視界は黄砂のためか薄ぼんやりとしており、少し離れた八塔寺山や船岩は見えるか見えないかと言った感じだった。それでもここに展望があったことで、荒山を見直す思いだった。その展望地を離れると後は道なりに戻って行くだけだった。少し下って急坂部を抜けると、また前方に展望が広がった。振り返ると山頂もすっきりと見えていた。往路では見なかった風景のため一瞬道を誤ったかと思ったが、すんなりと登山道のままに下ったのでそんなはずは無かった。すぐに往路では送電塔の位置から少しの間、巡視路を歩いていなかったことを思い出して、今はそこを下っているだけだと分かった。その辺りがこの荒山では一番広やかな風景と言えそうだった。そこを抜けると送電塔があり、10分も下れば登山口だった。荒山はごく小さな山なので、昼どきのみを楽しんだが、それでちょうど良さそうと言えそうだった。次回は展望の岩棚で昼食をとろうかと思いながら駐車地点へと近づいた。
(2009/2記)(2021/11改訂) |