旧夢前町(現姫路市)の南部、寺地区の低山に「ゆめさきの森公園」としてハイキングコースや体験学習施設が作られたのは2003年8月のこと。西麓には通宝寺池が佇んでおり、ハイキングコースも尾根の遊歩道を背骨にして幾つかの遊歩道が分かれており、組み合わせで楽しめるようになっている。この「ゆめさきの森公園」を初めて訪れたのは2002年10月のことで、ちょうどハイキングコースが作られている最中だった。遊歩道の丸太は真新しく、年月と共に落ち着きのあるハイキングコースになってくれればと歩きながら思ったものである。その通宝寺山のハイキングコースを完成後も歩いてみたいと考えていたのだが、山頂に立つのが目的の山では無く、尾根を歩くことが主体となるためちょっとメリハリが感じられず、なかなか二度目の気持ちにはならなかった。ただ半日程度を気軽に楽しむときには良いのでは思っていた。その通宝寺山を再訪したのは2008年5月下旬のこと。前日が雨、この日も曇りでときおり小雨のぱらつくあいにくの天気だったが、午後に少し体を動かそうと考えた。ただ天気のこともあって無難で数時間程度の軽いハイキングを楽しむことにした。そこで自宅からさほど離れていないこの山と言うか「ゆめさきの森公園」が思い浮かんだものである。
天気予報では午後には晴れて来ることになっていたが、天気の回復は遅れているようで、空はどんよりとしたままだった。公園の駐車場に着くと、40台は止められる駐車場の八割方が埋まっていた。この天気でハイカーがいるとは思えなかったので、公園内の拠点施設に来ているようだった。この駐車場に着くまでどのコースを歩くかは漠然としか考えていなかったのだが、駐車場の公園案内図を見てまずは「古墳の道」を登ることにした。後は尾根コースの「ラクダの背道」を歩き、どのコースを下るかは歩いているときに決めることにした。あいにくなことに再び雨が降り出した。その小雨の中を「古墳の道」登山口へと車道を引き返す形で歩き出した。小雨なのですぐに止むだろうとそのまま歩いていると、次第に強くなってあわてて雨具を着た。小坪集落内の道を歩いていると、コースの標識が現れてそちらに折れる。登山道は薄暗い植林地の中を緩やかな小径で始まった。前日からの雨で登山道の一部は水の流れになっていた。植林地を抜けると雑木林の中をつづら道で登り出した。雨は弱くなっていくぶん空は明るくなったようだった。尾根を歩くようになると程なく小坪山古墳への道が分かれた。その小坪山古墳に立ち寄る。ごく小ぶりな古墳で、発掘されていなかったら分からなかったのではと思われるものだった。そこを離れて尾根登りを続けると稜線に出た。地図を見ると260m地点で、そこは少しは展望があった。南から絶えずオートバイの爆音がするのでそちらを見ると、倉掛山の麓にサーキット場が見えていた。また方向を変えると北に続く小ピークの並んでいるのも見えていた。ここに着いて漸く雨が上がった。稜線の遊歩道は「ラクダの背道」となって、まずは緩やかな下り坂になった。雨に濡れた草が少し煩わしかったが、遊歩道は適度な歩き易さだった。下生えとしてシダの茂る所もあったが、遊歩道は隠されることも無く、むしろ新緑のシダの色を楽しみながら歩いた。のんびりしたハイキングだったが、やはりこのような天気の中を歩く人はいないようで、誰とも会わずパートナーと二人きりだった。三角点ピーク(点名・寺村)、共同アンテナの立つピークと小さなピークを幾つか越して、ちょうど16時に「ホウノキの道」分岐点に着いた。この時間を見てこの日の尾根歩きはその先の三角点ピーク(通宝寺山、点名・糸田)までで終えることにした。出来ればその先に続く「岩の山道」を歩きたかったのだが、それは歩きながら次回に持ち越すことにした。分岐点の先でこの日初めてのきつい坂があり、それを越して三角点に着いた。そこからは東に置塩山が眺められた。この展望を得て下山とする。「ツバキの道」分岐点で尾根を離れる。「ツバキの道」は緩やかな落ち着きのある遊歩道で続き、程なく通宝寺池のそばに出た。後は池そばの遊歩道で駐車地点へと戻るだけだったが、漸く天気は回復を見せて、陽射しが「ゆめさきの森公園」を明るく照らし出した。
(2005/6記)(2020/4写真改訂) |