秋津富士は東条町の北、東条湖の北東に佇む山で、南麓の秋津集落からは、なるほど富士山型に見えるが、方角によって姿は変わり、東条湖から望む姿は、ごく平凡である。この秋津富士は「播磨 山の地名を歩く」に紹介されているが、そこには登山路はあるものの見つけるのはかなり難しいと記されている。
この秋津富士を05年の夏の盛り、7月最終の土曜日に訪れた。その前週に北アルプス山行をしており、そのときパートナーが登山靴の靴底を両足共に剥がすというアクシデントを起こしてしまった。そこで新靴を買うことになった次第だが、その履き慣らしを早速することにした。そこで簡単な山として向かったのがこの秋津富士という訳である。午前の早い時間に買い物をしたのだが、国道428号線で東条町に近づいたときは、真昼どきになっていた。東条湖の南にある黒谷交差点で右に折れて秋津集落に近づくと、「秋津富士」の道標が立っていた。その道標に導かれるままに別荘地の道へと入り、舗装路の山道を登って行く。所々に道標は立っていたが、1個所で少し迷ったこともあって、登山口に着いたときは13時が近くなろうとしていた。登山口には立派な標柱や案内板が立っており、どうやら最近になって東条町が整備したものと思われた。またそこには2台ほどの駐車スペースがあったが、真夏の昼時とあって、他に車は見えなかった。そこに駐車してすぐに歩き始めた。登山道は一部で丸太階段もあって、よく整備されており、楽々と登って行けた。また気温は30℃を超えていたが、少しは風があって、暑さを厳しく感じることは無かった。そしてゆっくりと登っていたのだが、6分で山頂に着いてしまった。呆気ないばかりの短さである。どうやらハイキングとして楽しむには、麓から車道を歩いて来ないといけないようだった。ただこの山頂も手頃に整備されており、立派な山名標柱も立っていた。そしてそのそばには木陰があり、休むのには良い所だった。そして山頂には快い南風が渡っており、涼しさを味わえたのはうれしかった。この山頂は展望も良く、東条湖の絶好の展望地になっていた。その東条湖を眺めながら、木陰で遅い昼を採ることにした。それにしても山頂に立つのが簡単すぎた。いくら真夏時と言っても、これではもの足りない。そこで尾根続きとなる北隣りの浦山まで足を延ばすことにした。そこでパートナーに提案してみたのだが、尾根がどうもヤブ尾根のように見えるためか、靴が傷むからとあっさりと拒否されてしまった。この木陰で昼寝をしていたいとのことである。そこで単独で向かうことにした。適当に尾根を歩き出してみると、やはり灌木の茂みが多く、サルトリイバラも混じって、見た目通りのヤブ尾根だった。ただ少し歩いて尾根道のあるのに気付いた。草に隠された小径だったが、それを辿れるのは助かった。そのまますんなりと浦山に近づけるかと思っていると、それが不確かになったり、またはっきりしたりと、どうもすんなりとは進んでいけない。何度か尾根を外して、修正を余儀なくさせられた。小笹やシダも見られる尾根で、元は里山であったのが、いつしか自然に戻ろうとしているようだった。そのため展望も無い尾根で、ひたすら尾根を辿ることに専念していたが、浦山山頂の南西隣りのピークに着いた頃より、漸く展望が現れ出した。北面の雑木が疎らになって、清水寺のある御嶽山辺りがすんなりと見えていた。そこより少し歩いた所が、三等三角点の有る浦山山頂だった。ただそこは単に三角点が有るというだけで、辺りは雑木が占めており、展望の無い山頂だった。三角点周りの雑草を刈っただけで、すぐに引き返すことにした。上空は薄晴れから薄曇りに変わって来ており、少しは暑さが和らいでいた。やはり尾根道は現れたり消えたりだったが、秋津富士に近づくとはっきりとした小径となり、秋津富士山頂の東側につながっていた。下山後は東条湖畔に立ち寄ってみたが、湖上の白鳥を形取った遊覧船は運休しており、少し寂れた観光地の風情だった。
(2005/7記)(2012/5改訂)(2020/11改訂2) |