相生市の北部、矢野町にはちょっと面白い山が揃っている。感状山に権現山、高巖山と、いずれもごく短時間で登れるので登山としての面白さは少ないが、山上では奇岩があったり城跡があったりと興味を覚える山域である。2009年の2月に入ったとき、高巖山の山頂そばにある高巖を見ようと二週続けて高巖山に登ったが、その二週目のおりに高巖を南から眺めていたとき、北の方に送電塔が立つ小さなピークが見えた。そのとき、送電塔の辺りにだけ光が当たっており、そこに立てばこちら側がすっきり眺められるのではと思えた。さっそく「二木」の地図を開くと、そのピークは標高330mで三角点記号(点名・能下)が付いており、高巖山からは単純に尾根を辿って行けばよいことが判った。しかもその尾根はずっと緩やかなまま330mピークまで続いていた。これは帰りの駄賃程度で登れると判断して、高巖山のハイキングを終えると、さっそく向かうことにした。向かうと言っても能下集落へと下山するとき、鞍部の位置で能下集落への小径に入らず、そのまま尾根を北へ辿るだけだった。鞍部に戻ってきたときは12時に近い時間になっていた。鞍部から先へも道は続いていたが、尾根を通っておらず、尾根から少し離れて幅広い道で続いており、どう見ても巡視路のようだった。3分と歩かず送電塔の立つ位置に着いた。ちょうど12時だったので、そこでごく簡単に昼を済ませることにした。その送電塔の位置からは尾根上に小径が続いていた。巡視路よりは多少悪いかと思える程度の道だった。地図で見た通りの緩やかな尾根で、散歩をしているのと変わらなかった。ただ展望は良いとは言えず、赤松を主体とした林が両側に続いていた。地表がすっかり松葉に覆われている所も見かけた。緩やかだった尾根が漸く傾斜が強くなってきたとき、次の送電塔が現れた。それが330mピーク直下の送電塔で、高巖のそばから見えていたものだった。その送電塔はまだ新しいのか、辺りには切り倒された雑木が放置されており、ちょっと荒々しい風景だった。どうも送電塔建設も一種の自然破壊ではと思ってしまった。その送電塔のそばを通ってほんのひと登りで三角点ピークに着いた。三角点は四等三角点(点名・能下)だった。そこも松の木が多かったが、送電塔の建つ方向が開けており、南の方向を見ると、低い位置に高巖山から権現山の尾根がシルエットで見えていた。その眺めを期待してそこに立ったのだが、今立っているピークの方が高いために見下ろす形になり、また周りの山の方がずっと高いので、どちらの山もごく小さな山にしか見えなかった。せっかく来たのにその小ささを確認することになってしまったのは意外でもあり、ちょっぴり残念な気持ちにさせられた。その権現山、高巖山やその背後の山並みを少時眺めた後、引き返すことにした。下山は緩やかな尾根を下るとあって、足には何とも楽だった。本当に散歩の気分ですたすたと歩いていると、ときおり見える高巖山が次第に大きくなるのが面白かった。
(2009/3記)(2013/1改訂)(2021/10改訂2) |