TAJIHM の 兵庫の山めぐり <西播磨編
 
札楽山    ふだらくやま 350m たつの市
 
1/2.5万地図 : 龍野
 
【2012年12月】 2012-109(TAJI)
 
   札楽集落より  2012 / 12

 札楽山(ふだらくやま)の名を初めて知ったのは「揖保郡地誌」の中だった。「善定村の西にあり渓谷千有余ありて・・・・ 山中には閑静の地ありて武陵桃源に入るが如き感あり」と書かれていた。その位置を知ろうと「龍野」「二木」の地形図を見たのだが、札楽集落の名は有るものの札楽山は特定出来なかった。そこで現地へ行けば分かるだろうと出かけたのは、2011年11月のことだった。ところが地元の人もよく知っていなかった。そこで集落の背後の尾根ではないかと想定して、遠くから目立っていた387mピークから三角点ピーク(点名・奥善定)までの尾根を歩いた。これで札楽山は登ったつもりでいたのだが、念のためにその後にたつの図書館で郷土資料を調べたところ、札楽山の記述が載っている本を見つけた。それは「善定村史」で、札楽山の位置についてはやはりはっきり書かれていなかったものの、松尾神社の背後の尾根では無く、東向かいの尾根ではと推測された。どうやら点名・奥善定を持つ尾根を勘違いで登ってしまったようだった。本の記述を更に追うと、松尾神社は元は山上にあって、その位置を札楽山と呼んだこと、また東隣りには大きな岩を持つピークがあり、そこには祇園社が祀られていることも書かれていた。そこで札楽山を目指したい気持ちと祇園社のピークに興味が湧いたことで、改めて札楽集落に向かうことにした。
 向かったのは2012年12月8日の土曜日で、風が非常に冷たい日だった。札楽集落に入ったとき、改めて地元の人に札楽山について聞いてみたのだが、やはりはっきりせず、祇園社辺りの尾根の総称が正しいようでもあった。勘違いした前回と同様に松尾神社に車を止めて、札楽山林道を歩き始めた。松尾神社からは祇園社の大岩が見えていたので、それを目標に進んでいたところ、札楽山林道から支林道が左手に分かれた。その支林道で近づくことにした。支林道は既に廃道になっており、かなり荒れていた。但し赤テープが点々と付けられていた。少し進むと祇園社の方向にまた別の支林道が分かれたが、赤テープが札楽山への道案内のように思えて、そのまま西に向かう林道を伝った。支林道は廃道になっているため、樹木が生えて自然に帰ろうとしている所もあった。またすんなりと歩ける所もあった。そのまま無難に札楽山のある主尾根へ向かえると思っていたのだが、その先で思わぬ苦労をすることになった。植林の倒木が現れて、そこを越すのが何とも難儀だった。幾つも幾つも倒木を乗り越えた。漸く倒木が見えなくなったときは林道ははっきりしなくなっており、赤テープも見えなくなっていた。そこで小さな尾根に取り付いて主尾根を目指すことにした。その尾根歩きは特に難しくは無かったが、難しかったのは地形で、ふもとから見るのとは違っていた。急坂を登りきればピークが現れるものと思っていたのだが、尾根は緩やかにずっと上り坂で続いた。しかも冷たい風が吹き荒れていた。その風に耐えながら歩を進めた。小さなピークが現れたときに位置を確認しようと考えていたのだが、標高400mを越えても上り坂は続いた。そこで漸く地形図で位置を確認することにした。そして気づいたことは、一体は緩やかな丘陵地になっていることで、ふもとからはその縁を見て尾根として捉えていたということだった。その丘陵地の中に立ってしまえば、どこが札楽山なのか掴むのは難しいのではと思えた。そこでこの日の札楽山探しはすっぱりと諦めることにした。昼どきになっていたので、足を止めた位置で手早く昼食を済ませた。冷たい風を受けながらで、ちょっと厳しい状況だった。ただ上空は曇りから晴れに変わろうとしていた。下山は歩いて来た尾根を引き返すのだが、歩き易い所を伝って下った。そのためどんどん東に寄ることになった。そのうちに急坂が始まって、丘陵地を離れ出したことが分かった。後は適当に下って下り着いた所は、札楽山林道の入口に近い採石場の辺りだった。どうやら札楽山も祇園社のピークも知らないままに通りすぎてしまったようだった。これではどうも札楽山に登った気にはなれなかった。そこで気持ちをすっきりさせるためにも祇園社のピークを目指して、その岩場の上に立つことで札楽山登山をしたことにしようと考えた。
 そのリベンジ登山を翌日の9日に早速実行とした。但しパートナーは同行せず、単独で向かうことになった。前日は気温は3℃の上に強い風が吹き荒れていたが、この日も全く同じような天気で、気温は更に2℃まで下がっていた。スタート地点はやはり松尾神社からで、麓から見える祇園社の大岩を目指して登って行くことにした。まずは札楽山林道歩きだったが、昨夜は雪が降ったようで、路面はうっすらと白くなっていた。廃道となった支林道に入るまでは同じだったが、その先で現れた南に向かう別の林道に入った。その方向で祇園社に近づけると思えたからである。その支林道はすぐに不確かになったので、祇園社の方向を目指して山すそに取り付いた。辺りは疎らな雑木林で、登るほどに尾根を伝うようになった。その尾根の傾斜が増してくると、シダが増えてきた。そのシダを避けるように登るも、ときにシダ帯に突っ込んだ。シダ帯を抜けると少しは歩き易くなった。そして祇園社が近づくと、大きな岩が点々と現れるようになった。その大岩を巻くようにして登った。祇園社の大岩が右手間近に見えており、正しく登れていることが分かった。ほぼ祇園社のそばまで来たとき、一つの大きな岩の上に立つことが出来た。そこからは祇園社の大岩が眺められるだけでなく、北の風景が広く眺められた。強い風に煽られながらも展望を楽しんだ。その大岩からごく僅かな時間で祇園社のピークに着いた。祇園社はピークには見当たらず、大岩の上に立ってみると、その片隅にひっそりと鎮座していた。ごく小さな祠だった。大岩の上は広く平らになっており、先ほどの大岩の上よりも展望が良かった。但し一段と風が強く、身が切られるような冷たさに長くは立っていられなかった。空は絶えず北から雲が流れてきておりほぼ曇り空と言えたが、雲の流れは速く、一団の雲が流れ去って暫く青空の広がることがあった。この祇園社のピークでは、風の避けられる場所を探して、そこで軽く昼食とした。さてこの後はどうするかだったが、尾根のままに南へと歩いて行くことにした。その尾根だったが、灌木の茂る所があるものの、概ね歩き易い尾根だった。そして小さなピークを越すことがあっても、ずっと上り坂だった。漸く下り坂になる位置に来たとき、大岩が現れたのでその上に立ってみた。そこからは少し展望があり、東に新池、南東に亀山、南に大蔵山が見えていた。これで現在地がおおよそ分かった。「龍野」の地図を見ると457m標高点が記されている位置に居るようだった。そうなるとそのまま南に下れば、大成池に出るはずだった。その大成池は樹林に遮られて見えなかったが、そこまで下ってみることにした。少しヤブをこぐ感じで下ると、登山道に出た。新池と大成池を結ぶ登山道だった。大成池の方向へと歩くと、僅かな距離で大成池の東端に出た。池の西端を見ると、数台の車が止まっているのが見えていた。上空はすっかり快晴だった。ここまで歩いたことで札楽山の位置も分かったので、引き返すことにした。帰路は歩いてきたコースを単純に戻ることにした。ところが祇園社が近づいたとき、尾根筋がちょっとはっきりしなくなった。一度は一つの尾根を下り出したのだが、尾根の様子が違うので尾根の分岐点まで戻って、東隣りの尾根に入った。それも違うようだったが、どの尾根を下ってもかまわないと思い直して、そのまま下って行くことにした。その尾根も急斜面に大岩が点在しており、その岩を避けながら下った。そして途中で展望が開けたとき、祇園社の尾根よりも一つ西の尾根を下っていることが分かった。二つの尾根を歩くことで分かったことは、一帯は岩が多くあって、ちょっとした修験の山の雰囲気があることだった。そのことが補陀落(ふだらく)信仰と結びついて、山上に松尾神社や祇園社が作られたのではと考えられた。この下山の尾根はシダが少なく、祇園社の尾根よりは少し歩き易かった。最後は廃林道に下りてきた。後は廃林道を歩いて札楽山林道に合流すると、駐車地点の松尾神社へと近づいて行った。
(2012/12記)(2021/4改訂)
<登山日> 2012年12月9日 10:02松尾神社スタート/10:11廃道となった支林道に入る/10:55〜11:02祇園社の隣りの岩/11:04〜36祇園社/12:07〜27新池が見える大岩/12:38大成池/12:51大岩に戻ってくる/13:20札楽山近辺(旧松尾神社のあった辺り)/14:05廃林道に下り着く/14:21エンド。
(天気) 絶えず北から雲が流れており、雲の多い空だったが、雲が途切れて青空の現れることもあった。気温は2℃ほど。身が切られるような冷たい風が北から吹いていた。昼が近づくと青空の広がることが多くなり、次第に快晴に変わってきた。昼を回っても木立の中は2℃と変わらず冷たかった。視界はまずまず良かった。
<< Photo Album 2012/12/09 >>
この日も松尾神社から歩き始めた ゲートを通って札楽山林道を歩くのは前日と同
じだった
昨夜に雪があったのか、路面は白くなっていた
祇園社の大岩が林道から眺められた その位置
を念頭に置いて歩を進めた
札楽山林道から左手に分岐した支林道に入った
ここまで前日と同じだった
廃道となっていた支林道から別の林道が南に分か
れた そちらが祇園社の方向なのでそちらに入った
支林道が不確かになったので、適当に斜面に取
り付いた
初めのうちは斜面は緩やかで、無理なく登って
行けた また尾根筋を辿るようになった
次第にシダがはびこりだしたので、歩き易い所を
探して登った
ときにシダ帯を突破することがあった シダ帯を抜けると歩き易い尾根になった 尾根からは祇園社の大岩が右手上方に眺められた
尾根は急傾斜になると共に、大きな岩が目立っ
てきた その岩を巻くようにして登った
一つの大岩の上に上がれそうだったので、上が
ってみた
大岩の上は展望が良かった 北の空は黒い雲が
広がっていた
足下に札楽集落が見えていた 祇園社の大岩が間近に見えていた 祇園社のピークは目と鼻の先だった

 祇園社のピークに
 着いた 狭いなが
 らも開けていた


   そばの大岩の上も
   平らになっていた
大岩の上には祇園社の小さな祠が置かれていた 大岩の上からは北に向かって広々とした展望が得られた 北の空は次第に青空が見られるようになってきた

 右上の写真に写
 る高倉山を大き
 く見る

 高倉山に陽射
 しが当たりだ
 した

 西の方向を大きく
 見る


   左の写真に写る電波
   塔の建つ辺りを大き
   く見た
祇園社を離れて尾根を南へと歩いた 岩を割って育った松を見た はっきりとしたピークは無く、次第に高度を上げた
ときに灌木に阻まれたが概ね無難に歩いて行けた 途中からごく緩やかな尾根となった 大岩に着いた その辺りで標高は457mと思えた

 大岩の上からは南
 東に亀山が望まれ
 た 東の足下に見
 える池は新池のよ
 うだった

 新池を大きく見る
南に見えていたのは大蔵山だった 軽いヤブコギで南の方向に下った 新池と大成池を結ぶ登山道に下り着いた
西へと歩くと、すぐに大成池の土手が見えてきた 大成池の西端に立つ この大成池を見たことで引き返すことにした
歩いてきた尾根を引き返した なだらかなうち
は良かったが、祇園社が近づくと尾根が分かり
難くなった
少し平らになった小さなピークを見る 後から
考えると、この辺りに旧松尾神社があったのか
も知れない
東の方向を見ると、そちらの尾根に祇園社の大
岩が見えていた 下る尾根を一つ違えたようだ
った
こちらの尾根の方がシダも少なく歩き易かった こちらの尾根でも大きな岩に出会うことがあった 祇園社の大岩に光が当たっているのを見る
途中で北を展望出来る場所が現れた 北の空は澄んだ青空に変わっていた 左の写真に写る黒尾山を大きく見る
上の写真に写る暁晴山を大きく見る 左上の写真に写る鉾立山を大きく見る
北東には明神山がちらりと見えていた 麓が近づくと植林地に入って行った 倒木に阻まれることがあった
沢そばに下り着いた 沢に沿って歩くうちに廃林道を歩くようになった 廃林道では朽ちてしまった三輪自動車を見た
歩くうちに見覚えのある風景となった 札楽山林道に合流した 駐車地点の松尾神社に戻ってきた