山頂に利神城址を持つ利神山は小ぶりな山ながら山頂の城跡が目印となって、一帯では大撫山と共に目立つ山になっている。登山はいたって簡単で、JR平福駅の近くから始まる登山道を歩けば、30分ほどで山頂に立つことが出来る。そのためこの山を単独で目指すとなると少し物足りなさがあり、他の山と併せて登ることになりがちで、2007年4月も鳥取の山に登る前の足慣らしとして訪れた。中旬の土曜日のことで、播州こそ朝から晴れていたが、山陰地方は朝が曇りで午後から晴れに変わる予想だった。この日の目的とした牛臥山は鳥取県智頭町の間近にあり、天気をにらんで午後から登ることにした。そこで午前の時間を行く道中にあるこの利神山で過ごそうと考えた次第だった。車は平福駅の周辺にでも止めようと平福駅に近づくと、翌日に平福まつりがあるとかで、その準備もあってか駅周辺での駐車はご遠慮下さいと貼り紙があった。そこで車は道の駅「ひらふく」の片隅に止めることになった。車を降りると強い風が吹き付けて来た。気温は15℃と低くは無かったが、風には冷たさがあって肌寒さを感じた。平福の町並みを通って行くと、通りは年々景観保存に力を入れているようで、あか抜けした佇まいに変わってきていた。川端の土蔵群も壁が塗り直されて、小ぎれいになっていた。その土蔵の風景を眺めながら、佐用川にかかる小橋を渡った。その先で智頭線の線路の下を潜るとゲートが出来ていた。害獣除けのゲートのようで、きちんと扉を閉めて登山口に向かった。もう後は道なりに登って行くのみ。陽射しは暖かかったが、強い風を受けながらの登りは、寒さにおいてあまり冬と変わらないように感じた。登るほどに足下に平福の家並みが広がって来た。北の空は天気予報通りに薄黒い雲が広がっていたが、南の空はすっきり晴れて、平福の町並みが陽射しに明るく照らされていた。天王神社と書かれた小さな祠のそばから尾根登りとなり、始めはやや急坂だったが、程なく適度な上り坂になった。ところで登山口に向かう前に標識があって、城跡は崩壊の危険があるため登山は遠慮して下さいとあったが、その城跡が見えて来ると、なるほど石垣がいたる所で崩れかけており、雨上がりはけっこう注意が必要のように思えた。但し危険と言ってもファミリー登山者に対しての注意ではと思えた。この日に利神山を訪れた目的の一つに、城跡の桜を見ることであったが、これは半分以上散ってしまっており少し遅かったようだった。それでも少し残った桜が季節感を漂わせており、城跡の持つ少しはかない雰囲気に一役買っていた。その利神城址は目立った木が無いだけに素晴らしい展望地になっており、毎回目を楽しませてくれる所だった。強い風の中、遠くは那岐山、後山まで一望の展望を楽しんだ。その山上も20分ほどで切り上げて下山に向かった。利神山は片道30分のミニハイキングだったが、展望の楽しみと共に城跡は遠い昔を偲ばせてくれるので、いつ登っても少ししんみりとさせられてしまう所だと思った。
(2007/5記)(2012/12改訂)(2021/2写真改訂) |